tilt log

本と、その他諸々のこと。理系的なこと。

渋滞について

高速の渋滞について。ブレーキ踏むと起こるとか、対策に車間を取れとか言われるが、全然納得出来ない。

よく言われる理屈をおさらいすると、ある車が1秒ブレーキを踏むと、その後ろの車は2秒ブレーキを踏み、更にその後ろは3秒…でついには止まってしまうと。だからその対策として、車間距離を広めに取れば、前の車に合わせてブレーキする必要もなくなると。

え…車間距離を開ければ渋滞が減る!?? 高速道路の渋滞は誰が悪いのか - 自動車情報誌「ベストカー」 (bestcarweb.jp)

でも、車間をとったら道路に存在できる車の数が減るから逆効果じゃない?みんな疑問に思ってるよね?この理屈はそこの説明ができてない。

そもそも道路を通行できる台数には物理的な上限があるはずで、それを超えたときに渋滞が起こっていると考えるほうが腑に落ちる。(この場合、運転レベルの対策は存在しない。)

というわけで上限がどのくらいか計算してみる。ある地点を通過する車の台数は、車通りの多い箇所だと2秒に1台くらいだろうか。この場合、0.5台/s = 30台/min = 1800台/hr となる。

このときの車間距離は、速さ100km/hrだとすると秒に換算して28m/sなので、2秒で58mということになる。高速道路で推奨される車間距離は100kmなので、だいぶ狭いが、混んでるときの実際はこんなもんかもしれない。

車のスピードは速くなると必要な車間も比例して伸びるので、道路を通行可能な台数はスピードに依存しない。

これより多く車が流入してきたら、そりゃあ渋滞するだろう。渋滞しないとF1みたいな密着車間で走行することになるし、これで車間をとれと言われても物理的に無理だ。流れが止まる端緒はよく言われるようにブレーキなのかも知れないが、ブレーキの淀みが伝わるほどに車が連なった時点で、渋滞は必発の状況といえる。

渋滞を抜けたらスカッと車間が広まるのは誰もが経験するところで、渋滞は車が増えすぎて詰まった車間を広げるために必要な淀みなのだ。

 

上の計算があってるか、現実に通行してる車の数から確認してみる。

高速道路の月別通行台数(令和3年度) | NEXCO東日本 (e-nexco.co.jp)

このHPによると、交通量の多い高速で200,000台/dayくらいな様子。ここから1時間あたりの台数をフェルミ推定的に予測しよう。

まず上りと下りがあるので2で割って 100,000 台/day

3車線と仮定して3で割って1車線あたり 33,333 台/day・車線

1時間あたりに換算して 33,333/24≒1,389 台/hr・車線

でも夜間と昼間の通行量を同じとして24で割るのはやや強引なので、例えば18で割れば、

50,000/18≒1,852 台/hr・車線

これで見事に、最初に見積もった1800台/hrと合致する。合いすぎてワタシ自身ビックリしてる。

通勤のピークや、行楽シーズンで、1800台/hr・車線の渋滞ボーダーラインを超えて車が多くなった時に渋滞が起こるのだ。この仮説、もう間違いないんじゃなかろーか。

 

だから車間を取るのは渋滞対策にならないかと言うと、そうでもなくて。

自然渋滞発生モデル - MASコミュニティ - 構造計画研究所 (kke.co.jp)

メタ安定という、渋滞が発生しうるけどうまく流れている状態があるそうだ。ある程度以上の台数が高速道路上にいる場合に渋滞は必発だが、渋滞するかしないかの瀬戸際の台数のときに、メタ安定をキープする対策として、車間距離を開ける意味はあるだろう。

 

~2022/4/29追記~

渋滞の基礎知識 | 快適♪渋滞ドライブ | 日産ドライブナビ (nissan.co.jp)

「1時間に交通量が約2000台」「1kmあたり25台の密度」を超えると渋滞が発生!

とのことで、ワタシの論旨に近いところに言及されてました。でもその後は結局、車間を取れって話になってる。25台/km以下を満たすように車間を取れと。イヤ、25台/km以上車がある状況で一部分の密度を下げたら、それ以外が割りを食って密度上がるだけだと思うなぁ。前との車間を取るってことは、後ろとの車間が縮まるってこと。後ろの車もそこから車間を取ろうとしたら、後ろの後ろはもっと縮まる。ブレーキを踏んだら渋滞起こる理論のブレーキと同じ効果にしかならない。

事故防止の観点で車間は取るべきなので、その結果渋滞が起こるのは仕方ないと思いますけどね。こんな疑わしい理屈で車間とれって結論に誘導しても仕方ないと思うなぁ。