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本と、その他諸々のこと。理系的なこと。

読書録23 進化する地球惑星システム

「地球惑星システム科学」というのは、地球物理、地質学、地理学などなどひっくるめて、地球に起こってる現象を俯瞰して理解しようとする分野のこと。最先端の物理学が素粒子から宇宙までを説明できたとしても、多体系は複雑怪奇で、地球ほどの規模ともなればもう原理から説明なんてムリ。そこをなんとかしようというのがこの学問で、目に見えるこの地球を理解しようというのはある意味、今一番面白いんじゃないか。

東大の地球惑星科学専攻の先生方が書いた、学部生向けの教科書というか副読本。雑学好きの読書にしては娯楽要素がなく無骨ですが、情報はみっちりで興味があるなら楽しめる。

 

以下、覚えておきたい内容を抜粋。

・太陽系、地球の成り立ちから地球の組成が理解できる。例えば、CとOはまず安定なCOを作り、余ったものが金属元素と結合する。Oが余れば酸化物、珪酸塩系の岩石質な組成に。炭素が余れば炭素質に。恒星周囲のC:O比率で惑星の組成が決まる。

・H2Oを液体として大量に保持し続けるには、温度の他、気圧、重力などかなり微妙な条件が揃わないと難しい。温度は太陽からの距離だけでなく、大気組成の温室効果ガス比率とかも大事。

微惑星が衝突を繰り返して惑星ができる。衝突による熱エネルギーは凄まじく地球の最初は表面の岩石が全て溶けたマグマオーシャンになっていた。今でも地球内部は溶融状態にあり、地球の歴史は冷え続ける過程の歴史である。

・地球コアは今も溶けた鉄。コアの熱はマントルの対流で運ばれ、徐々に放熱している。最外層は固化しプレートになっているが、プレートテクトニクスは火星や金星では見られず、当たり前ではないらしい。成立条件はまだ不明。

・地球の気候には 無氷床・部分凍結・全球凍結 の3つの安定状態がありえる。今は部分凍結、白亜紀は無氷床。全球凍結はまさかと思われてたけど、氷河性の堆積物が赤道から見つかったりして、マジでなったことがあるらしい。スノーボールアース

・3度のスノーボールアースの直後にカンブリア紀がくる。偶然にしてはできすぎで、生物進化を促進させた可能性あるが、詳細不明。

・回転体は慣性モーメントが最大になる向きに回転軸に対して動く。地球も洪水玄武岩の噴出などで変形すると、球がグルンと回ることがある。真の極移動。(公転面に対する自転軸の向きは変わらない)

・真の極移動が起こったのはカンブリア紀で、これも偶然とは思えない。この時期の石灰岩の炭素同位体比率にメタン大量放出があったと読める異常があり、真の極移動でメタンハイドレートが分解して温室効果で温暖化し、生化学反応が活発化した、と仮説がつけられる。

・コアの溶けた鉄の対流で地磁気ができる。ダイナモ作用。対流の具合でわりと簡単に地磁気は逆転する(1.65億年で300回以上)。この変動に影響するのはマントルの対流モードによる熱の移動。コア側と表層面が別々の2層対流か、両者がつながる1層か。

氷期間氷期は周期的にくる。周期は2万年と4.1万年と10万年の3つの周期がある。自転軸の歳差運動、自転軸の傾き、公転軌道の離心率、がそれぞれ原因と推定。ミランコビッチ周期。