tilt log

本と、その他諸々のこと。理系的なこと。

折り紙1 : ビバ!おりがみ

 その昔、「ビバ!おりがみ」という折り紙本の名著があった。

ビバ!おりがみ

ビバ!おりがみ

 

 「折り紙を設計する」という当時の一般人には驚愕の概念を理詰めで解説したもので、その成果としての作例もふんだんに紹介されている。表紙にあるのがその中でも傑作とされる「悪魔」、ツルやカブトで楽しんでいた人間には理解不能な、複雑怪奇な造形を実現しておられる。

小学生時代に図書館でこの本を見つけて感動して、悪魔など手順をそらで覚えるほど繰り返し折ったもの。後年になって改めて購入しようと探したところ、廃刊で入手困難とのことで大層くやしく思ったのでありました。いま古本で入手するなら2万円が相場、暴利だ(買ったけどね!!)。で、悪魔の折り図が埋もれるのは忍びないと思われたのか、改めて上梓されたのがこちら、「本格折り紙」 

本格折り紙―入門から上級まで

本格折り紙―入門から上級まで

 

 設計理論の特に理系的な側面は端折られているのが個人的には残念だが。改めて練り直された幾何学的な説明は十分読む価値あり。また掲載作品に関しては「ビバ!~」からさらに洗練されている。

以下、実際に私が折ってみたもの。

まず、「ビバ!~」にのみ掲載の変形折り鶴。羽の角度がねじれている。(写真ではちょっと分かりにくいが・・・)f:id:tiltowait9:20180324162451j:plain

さらに、変形かざぐるま。中央にオシャレな模様が入る。f:id:tiltowait9:20180324161717j:plain「ビバ!~」では、まず折り紙をたためる条件を幾何学的に再解釈して、伝承折り紙の変形を試みている。折り紙が進化してゆく過程を追ってるみたいでワクワクするんだけど、ココが「本格~」でははしょられている。

飾り兜、これは両方に掲載。こどもの日が盛り上がる逸品、スーパーかっこいい。伝承の兜しか知らなかった時代にこれは衝撃だった。f:id:tiltowait9:20180424030539j:plain

 

で、件の「悪魔」。折り紙幾何学はこんなところまで行き着くのだ。f:id:tiltowait9:20180207004437j:plain何度折っても見事な造形だなぁ。エライのは折った私でなく設計した前川氏。「ビバ!~」と「本格~」の両方に載ってるけど折り手順が違う。一度作った形を開いちゃって、残った折り線から別の形に織り上げる「ビバ!」の手順はアバンギャルドで楽しい。一方、開いたまま折り線をつけてゆく「本格」は、つまらないけど確かにこのほうがキレイに折れる。

 悪魔の前段としての「鬼」、「ビバ!」のみに掲載。f:id:tiltowait9:20180130000235j:plain羽の折り出しがない分、悪魔よりは簡単だ。先日NHKの番組「オリガミの魔女と博士の不思議な時間」で紹介されていて、番組ではツノが本と違ってインサイドアウトで白く表現されていたので、それに倣ってみた。五本指を折り出す工程は展開図のみで示されているので、解釈にちょいと慣れが必要。

 飛ぶカブトムシ、折図は「本格~」より。「ビバ!~」以降の作品。f:id:tiltowait9:20180305200604j:plainかつては折り紙での6本脚表現は難題だったが、設計理論でそれが当たり前にできるようになって、エスカレートした結果さらにツノが2本と翅が4枚折り出されるに至った。しかも後翅はインサイドアウト

前川氏の折り紙は素朴な遊戯としての側面を大事にしていて、紙が破れるような無理な工程がないことや、紙の厚みや弾性を考慮してもちゃんとまとまること、といった自主規制がかかっている。そんな縛りの中でもこの形ができるんだから、素晴らしいよね。

クジャク、折図は「本格~」より。f:id:tiltowait9:20180129172302j:plain「ビバ!」にもクジャクは載ってるけど、1:2長方形からの作例だったし、正方形から折り出す後発のこちらのほうがなるほど洗練されている。羽の表現は地図や人工衛星に使われることで有名な「ミウラ折り」、コレを折るのは超めんどくさい。

 ティラノサウルス、折図は「本格~」。f:id:tiltowait9:20180119175152j:plain「ビバ!」にも同じお題の作品が掲載されているものの、そちらはフォルムが現実と離れすぎているので前川氏自ら出来が悪いと言っておられる。高度化すれば写実性に寄っていくのが当然だが、折り紙は元々大まかな形をなにかに見立てる遊戯であるわけで、リアリティを持たせつつもデフォルメ感を損なわないバランスを大事にしているとのこと。この仕上がりはなるほど納得。