tilt log

本と、その他諸々のこと。理系的なこと。

虫の写真、2015夏

つうわけで、Canon EOS kiss X4を使った虫撮影の成果。去年はCanon EOS 6D使ってたんだけど、ダウングレードした方がよく撮れるってむかつくなぁ。
レンズはCanon EF100mm F2.8L マクロ。

ハキリバチ。細かい分類はわかんない。

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ジガバチは今日もグラマー。

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ジガバチとベニシジミがお見合い。このあとは、何事もなくすれ違った。

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オオモンツチバチ。花に夢中で撮りやすいヤツ。

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クロアナバチ。動きが速くてやや寄り足りない。

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絶対強者、シオヤアブ。

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絶対強者2、アオメアブ。超寄れた。

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知らないハチかと思って意気込んで撮ったが、触角と口がどうもハチと違う。ハチモドキハナアブの類と思われる。見事にだまされた。

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ミドリギンバエ。ハチ待ち時の手遊びで撮っただけだが、意外にも複眼の美しさが目を惹く。

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改めてベニシジミ。書き割りのような立ち姿。

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ショリョウバッタ、若くして人生最大のピンチ!

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旅先にて、愛車に見覚えのない鮮やかな色。ベニカミキリである。

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高倍率で撮影したいとき、APS-Cとフルサイズのどちらを選ぶかという話

一眼カメラの話。

デジカメでは、センサー(撮像素子)サイズが小さいほど写真に被写体が大きく映るんだけど、これを高倍率と呼んでいいかは議論の的。こんなことが起こる原因は、大きなセンサーがより広い面積を捉えるせいだ。言葉で言っても分かりにくいので、フルサイズ(でかい)とAPS-Cサイズ(やや小さい)を例に、下に図解。

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つまり、光学的にはAPS-Cサイズ(センサー小さい)の写真は、フルサイズ(センサー大きい)の写真をトリミング拡大したにすぎない。じゃあフルサイズで撮っといて後加工したらいいんかっつぅと、そうでもないってのが今日のお話。
トリミング拡大すると画素数が落ちるんですな、当然ながら。ただその落ち方が、想像するよりだいぶキツイ。我が家にある、APS-CサイズのCanon EOS kiss X4と、フルサイズのCanon EOS 6Dを例にとってみますと。 

kiss X4(APS-Cサイズ)のスペックは
 センサーサイズ: 22.3×14.9=332.3mm2
 画素数: 5,184×3,456=17,915,904 (約1800万画素)

対する6D(フルサイズ)のスペックは
 センサーサイズ: 35.8×23.9=855.6mm2
 画素数: 5,472×3,648=19,961,856 (約2000万画素)

6D(フルサイズ)の方が元々の画素数は大きいんだけど、X4(APS-C)並みの画角になるようトリミングすると、残る画素数は、

 19,961,856×(332.3/855.6)=7,752,653

と、たった800万弱になってしまう。X4(APS-C)の半分以下だ。細かい機能で6D(フルサイズ)が優れてるにしろこれだけ画素数が違うのは決定的なので、大きく撮りたい用途なら最初からX4(APS-C)を使った方がいい。6D(フルサイズ)の方が大幅に高価なんで悔しいが、これが現実。あと、X4の方がちっさくて軽いし。

あぁ、この違いを吹っ飛ばせるくらいの大砲レンズを買うなら、話は別ですよ。画質面ではそればベストだ、重いし何よりお高いけど。それができる人はそうして下さい。

漫画「H2」 ラストの解釈について

今更かつ唐突な話題ー
あだち充代表作のひとつ、「H2」について。 

この漫画、終盤は説明が極端に省かれているのでけっこう読解力を要求されます。ネットのブログレベルでは解釈について意見が割れてるので、決定版(俺なりの)を記しておこうと思い立った。ここまで解説するのはちょいと無粋ですがね。

33巻から始まるラストバトル・千川vs明和一戦は、一見ひかりを賭けて比呂&英雄が争っているような構図だが、これはミスディレクション。ひかりが英雄を選び、比呂が古賀ちゃんを選ぶことが、試合前に既に決定している。試合は比呂とひかりが気持ちに整理を付ける儀式のようなもので、しかも、整理がつくのは比呂が勝ったときだ。ただひとり英雄だけが、勝者がひかりを得ると思っている。
比呂とひかりの真意を伏せたまま試合が進行して、最終話で開示するのがどんでん返しになる、っつー構造だ。

これを信用してもらうためにまずは、比呂が古賀ちゃんを選ぶつもりである証拠として、以下2つのシーンを確認してください。

26巻
168p 比呂「I love you ちがうか?発音。」→古賀ちゃん「ううん。十分通じるよ。」
照れ隠しのおまけがついてるが、あだち作品らしからぬ強い言葉を発する比呂。十分コクってる。

31巻
166p 比呂「古賀。長生き ― しろよな。」
ひかり父の発言「長生きする嫁さんをもらえよ。」を受けて、比呂が古賀ちゃんに発する言葉。もはやプロポーズ。

 

あだちマンガの主人公が、ここまで言っといて翻意するのはナシですわ。あとはこのセンで、33巻以降の主な意味深描写を咀嚼してゆきましょう。この方針で全部まるっと余さず説明付きますから。

 

33巻
36-37p ひかり→比呂「がんばれ 負けるな。」
口先だけでいいからと応援をせがむ比呂、本当に口先でしか言えないひかり。ひかりが英雄を選ぶことを悟る比呂は、無理に言わせたことを謝る。ここは特に多義的で意味を読みがたいですが、あとで古賀ちゃんに同じ言葉を言ってもらうくだりと併せれば、こういうことかと。

75p 比呂→野田&英雄「おれはひかりのことが大好きなんだぜ。」
野田は口を滑らせたことを気にしてて、比呂がわざと負けることを心配してる。そんな野田を安心させるために比呂が言う。ただ、嘘ではない。ついでに英雄に聞かせて、真剣勝負を煽っている。額面通りに取ると他の読み方が全部変わってしまうが、これは読者へのミスリード

98-108p 比呂VS英雄の第一打席
高速スライダーによる三振、振り逃げ。比呂の勝ち。
意外にもストレートオンリーの真っ向勝負を避けたことに、割に合わないからと言い訳する比呂だが、らしくない。

151-152p 英雄「わかってねぇな。まだ明和一の本当の打線の力が。」→比呂「わかってねえのは ― お前だよ」
英雄は野球の話をしてるが、答えた比呂は二人の勝負にひかりを賭けた英雄の行動について言っている。最終話の英雄の言葉「おれは・・・何もわかってなかったのか・・・」にかかる。

164-170p 第二打席
意表をついたスローボール×3、三振。比呂の勝ち。
時間稼ぎして、走りつかれた比呂を気遣う英雄。しかし、比呂は容赦なく裏をかき、徹底的に勝ちにこだわっていることを明示する。

187-188p 「いつもの国見じゃねえな。楽しんでねえんだよ、あの野球大好き少年が ― な。」明和一の監督独白
比呂はいつになく試合に勝とうとしている。なぜ勝ちたいのか・・・それが問題だ。

34巻(最終巻)
18-19p 古賀ちゃん→比呂「がんばれ。負けるな。」
疲れるわきゃないと言いつつ疲れてる比呂。いつもより疲れる理由は、ひかりの応援がなかったからだ。奇しくも同じ言葉で古賀ちゃんの応援を得たことで、比呂は持ち直す。

48-58p 第三打席
比呂は変化球中心の配球、英雄は敢えてストレートコースを空振りして真っ向勝負を要求するも、比呂はダンコ拒否。結果は長打コースの当たりだが比呂の超反射でアウトとなり、形式は比呂の勝ちだが、英雄は比呂を捉え始めている。

60p 雨宮おじさん独白「悪役に回ってるなァ、今日の比呂くんは。」
勝ちにこだわる比呂を、ひかりが欲しいからじゃないかのように評する。このへんから作者は真相を示唆し始める。

71p 野田「よかったな。もう一度英雄と勝負できるぜ。」→比呂「負けたら身を引くつもりだぜ、あいつ。」→野田「それがわかってるならいい・・・」
まだ気にしてる野田と、次も勝負に徹することを示唆する比呂。野田は、比呂が真っ向勝負でわざと負けることは望んでないが、勝負に徹する比呂をらしくないとも思っている。

74p 比呂「あまりおれを信用するなよ。」→野田「まかせるよ、おまえに―」
比呂は次も勝負に徹するかを決め兼ねている。野田は選択を比呂にゆだねる。

107p 明和一の監督「損得勘定で動けるような本能は、本物じゃねえやな。」
これは比呂の最後の球種選びに関わる伏線。

111p ひかり「やっぱり・・・想像できないなァ、負けたヒデちゃんは・・・」 
表面的には英雄が勝つことを期待している言葉のようだが、後に開示されることには、ひかりは英雄が負けるのを待っている。英雄と比呂との関係を整理するために。どちらの意味にもとれる、あだち流言葉選びの冴え。

115p 比呂「なれよな、スチュワーデス。絶対―」
古賀ちゃんのスチュワーデスの夢は比呂の大リーグ行きとつながっている。比呂からこれに言及するのは、実質の告白。最終イニング前、勝負の決着がつく前に言うことに意味がある。

117-118p 野田「本当に好きなんだな?ひかりちゃんのこと。」→比呂「ああ。」→野田「がんばれ。」
比呂がひかりを好きなのはやっぱり事実。野田の声援は、比呂がひかりを勝ち取ることか、諦めることか、どっちに向けたのか・・・

142- 第四打席
2対0のリードで2アウト、ホームランを打たれてもいい場面での第4ラウンド、ついにストレートで攻める比呂、捉えた英雄の打球は実質ホームランだが、不自然な風がファールにする。本来の野球の実力勝負はここで決着している。つまり、英雄の勝ち。ホームランボールを押し出した風は、誰かが意図したかのよう。ときおり言及された、野球の神様、あるいは運命ってやつの仕業なのかも。
比呂「ちくしょう・・・どうしても俺に勝てって・・・か。」
打ちとらないとひかりとの関係が清算できない比呂には、打たれたことを喜ぶ気持ちもあった。その誰かさんに毒づく。

最後の一球、比呂の選択肢は以下の3つ。
 ①ストレート → 真っ向勝負を継続、今度はいよいよホームラン。
 ②スライダー → 真っ向勝負から逃げる、打ち取れるかもしれない。
 ③他の変化球 → 第三打席で見切り済み、どうせホームラン。
勝たねばならないこの場面、比呂はスライダーを選ぶ。あとで野田が言う「スライダーのサインだったぞ?」はロジンバッグを三回投げる仕草を指してると思われる。

スライダーを確かに選んだはずだが、実際に投げたのはストレート。損得勘定を越えた本能ってやつの仕業か。

そして、打たれるはずのストレートだが、英雄のバットは空を切る。
比呂「あんな球・・・二度と投げられねえよ。」→野田「投げさせられたんだよ。だれかに・・・な。」
比呂の勝利を要求する誰かさん(=野球の神様的なもの)が実力以上の球を投げさせたのだろう。地力で勝るはずの英雄は敗れ、比呂の狙いは完遂された。

175-176p これが種明かしにあたる重要なページ。

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ひかり「いつも鍵を閉めてるものね。ヒデちゃんのその部分にわたしの居場所があるんだって。-だから、なるべくドアは開けておくようにって。」→英雄「比呂がそういったのか?」
次にひかりの「ううん」が来るが、これは英雄の問いには答えていない。上のひかりの言葉が伝聞形なのは、やはりそれを比呂が言ったからだ。
英雄が負けた時にこそ英雄にはひかりが必要。英雄とひかりの関係が確立されるには、英雄が負ける必要がある。また負かす役を比呂が演じることで、比呂とひかりの関係は終わることができる。だから、比呂は英雄に勝たねばならなかった。
言ったタイミングは、試合前日の「がんばれ、負けるな」の後でしょうな。こんな会話を試合前日にしてたってことは、比呂とひかりが二人の関係をきっちり終わらせることに合意してたってこと。
ひかり「比呂はヒデちゃんを三振に奪っただけよ。」
元々ひかりの行方は野球の勝敗に関わって無かった、どっちが勝とうがひかりは英雄を選んだってことを説明する言葉。この言葉の前に英雄は、比呂が勝つことでひかりを譲ったのかと邪推していて、ひかりの「ううん」はそれを否定している。なお、三振にできなければ比呂とひかりの関係が清算できなかったわけで、少し嘘。

179-180p すべてを理解し、なるべき形に収まるふたり。

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英雄「おれは・・・何もわかってなかったのか・・・」
これは前述のとおり、比呂の「わかってねえのは ― お前だよ」を受けてのこと。

185p 比呂「ちょいと大リーグまで - かな。」→古賀ちゃん「じゃ、スチュワーデスはわたしだ。」
こちらの二人も、然るべくなっている様子。比呂と古賀ちゃんが同じ夢を追うことを確認しあっている。

めでたしめでたしとっぴんぱらりのぷう。

風立ちぬ雑感

 

風立ちぬ [DVD]

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こないだTV初放送された風立ちぬでひとこと。高原の休暇で、ヨメとにわか雨に降られるシーン、これ気象的にすごく正確なのだ。

・夏の高地は急激な上昇気流が起きやすく、積乱雲を形成することが多い。
・積乱雲の下は強い雨と風。カミナリを伴う。
・積乱雲は局所的なので、雲の下から抜ければ急に晴れる。
・積乱雲の周辺など、太陽を背に雨を見る時は、虹を見るチャンス。

風は作品に関わるモチーフなので総じて描写が丁寧だが、虹を見るまでの経緯にこれほど整合性を持たせているとは。

このじいさんがため込んでる知識は膨大だ。知識に裏打ちされた描写は、隅々まで意図を秘めている。きっと現実と違う事を描くときは、演出効果の計算があって自覚的にそうするのだろう。

このじいさんの描く世界に、テキトーで済まされたものはない。

読書録18:「太平洋の試練 真珠湾からミッドウェイまで」 イアン・トール

 

太平洋の試練 真珠湾からミッドウェイまで 上

太平洋の試練 真珠湾からミッドウェイまで 上

 
 
太平洋の試練 真珠湾からミッドウェイまで 下

太平洋の試練 真珠湾からミッドウェイまで 下

 

アメリカ人の書いた、太平洋戦争の序盤戦の戦史。太平洋戦争についてテレビで語られることって、「怖いものだった」「二度とやってはいけない」の切り口ばっかり。それはそれで凄く大事なんだけど、実際のところがどんなだったのかは、積極的に知ろうとしないと良くわからない。日本が勝っていた序盤は特にそう。著者がアメリカ人なのも、中立の視点を探しやすくてイイ。

上巻は勝ってた時代の話。何度も言うが、最初は勝ってたのだ。マジで。勝てた要因は、平和に暮らしてたアメリカとずっと戦争してた日本の組織効率の違いであり、航空機爆撃の有効性を見出した山本五十六の戦略眼であり、ゼロ戦の驚異的な航続距離と戦闘能力であり、、、などなど。アメリカ側から見れば、それは確かに脅威と呼ぶべきものだった模様。

下巻は、勝ってた日本軍がミッドウェイ海戦でボロ負けするまでの話。ミッドウェイは負けるべくして負けたとよく言うが。この本読むと、案外日本の勝ち目もあったみたい。引き分けくらいにはできたというか。いろんな局面の勝率4割くらいのカケで、片っ端からハズレを引いたって感じ。アメリカ側の準備がイチイチ日本を上回ってはいたけど。よくもまぁ全部負けを引いたもんだ。勝負事は微妙なことで大きな差がついてしまうものであるなぁ。

なおこの本の範囲を越えるが、ミッドウェイ以降は国力の地力が出て、アメリカンな桁違いの物量の前に手も足も出なかったそうな。山本五十六が当初示唆した、「勝てるのは最初だけだから勝ってる内にとっとと講和交渉する」戦略は完璧に的を射ていたわけですな。勝ってる時に引き際を判断する難しさよ。

読書録17: 「勝つために戦え!監督編」「勝つために戦え!監督ゼッキョー編」 押井守

 

勝つために戦え!〈監督篇〉

勝つために戦え!〈監督篇〉

 
勝つために戦え!〈監督ゼッキョー篇〉

勝つために戦え!〈監督ゼッキョー篇〉

 

 押井守監督が勝敗論を語るシリーズ。1作目はサッカーとかを例にしてたんで興味の外でしたが、映画監督を例にした2作目「監督編」で俄然興味深い話をしてくれました。3作目「ゼッキョー編」は勝敗論はもう置いといて、押井がいろんな映画監督に好き放題言う本。論点ぼやけてるけど、押井が映画を語る語り口に納得できたらとりあえず楽しい。

押井の勝敗論のキモは、自分にとっての勝利条件を明確化すること。どんな職業であれ最終目標は「本人が幸せになる事」だ。まずこれが目標だと定められている人がどのくらいいるだろうか?このシンプルな答えにたどり着くのは案外と難しい。また、どうすれば自分が幸せになれるのか?その答えは個々人で千差万別だが、その条件を各々自覚して、正しくそれを目指さなければ、いくら努力しようが幸せにはなれない。目前の努力を嫌って職を失う人も、自分に精進を課し過ぎて自滅する人も、ゴールを見誤っている。以前から漠然と思ってはいたけど、押井師匠が上手く説明してくれました。

例えば、巨匠キューブリックは映画史に残る名作を多数こしらえたが、商業性に問題があって晩年は全然映画を撮らせてもらえなかった。コッポラも同じく巨匠の呼び声高いが、借金まみれだった。どうやら、巨匠になること=幸せになる事ではないらしい。偉大だろうが本人が幸せになんなきゃ仕方ない。
映画はあくまで商業活動であって、お金出す人にしたら利益を生まない映画に存在価値はないが、監督にしたら撮りたいものを撮れないなら監督やる価値がない。大衆迎合に徹しても、そんな底の浅い仕事は長続きしない。個人的に撮りたい事が作家性と認識してもらえれば、普通は商業性を削ぐようなことでも固定ファン獲得に繋がって、逆に安定的に監督業を続けられるかも。さりとて、過去作に依ったファンが増える程に期待されるものが固定化されて新しいことができなくなって、過去作と違うスタイルの”今”撮りたい映画は撮れなくなる。なんともめんどくせぇが、全ての映画監督に求められるこの、商業性と芸術性の両立という問題、この勝利条件を押井流にまとめるならば、

「やりたいことしつつも次回作をつくる権利を留保し続けること」

プロデューサーから大衆迎合的な要求をされつつ、予算的限界もありつつ、自分の撮りたいものを撮りつつ、採算の取れる映画にする。映画に対して映画監督という立場のできること、できないこと、できなそうで、やりようでなんとかなること。仕事のできる人とできない人の区別に還元すればどんな職業にも当てはまる教訓的内容で、なかなか耳が痛いです。

ただこの論でいうと、監督業さえ続けられれば傑作と評される作品を作ることに全く興味がないようで、さらに言えば採算さえ取れれば駄作と呼ばれようが何の痛痒も感じないらしく、ファンでいたい自分の思いとはかけ離れた所へ行ってしまっているなぁと思わなくもない。「立食師」や「アサルトガールズ」程度で遊んでるのは正直やめてほしい。。。駄作感が続くとファンが減って商売できんくなるので、定期的にガチ作品も作ると期待するしかないですがねぇ。

それはそうと、作り手がどんな思いで映画を撮ってるかが分かって視野が広がるので、映画好きやってるなら読んでおくべきかと。例えば「エイリアン」では、宇宙船の床をグレーチングにしたのが凄かったんだそうな。確かにぼんやり覚えてるし、それが空間の印象づくりの決め手だったってのは言われてみりゃわかるけど、言われんとその工夫は意識するのむりっす。

アニメ映画リスト 101~150

これでワタシの知識は出し切り。この辺はちょっと愚痴がおおいかな?市場調査しながら見る映画を選定してますし、見る気も起きなかった映画も無数にあるわけで、必ずしも価値が低いなんてことは無いのですよ。

 

101機動戦士ガンダムF91

機動戦士ガンダムF91 [Blu-ray]

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 ・富野御大が監督した逆シャア以来の劇場版。TVシリーズ用のアイデアを映画にしたので、総集編映画的な駆け足感が見え隠れ。
・最近、子供と大人の対立って構造に思うところがなくなってきた。俺も大人になっちまったい。
・巨大な薬莢に当たって死ぬとは、いい描写ですなぁ。
・超人による専制政治は、短期的に良い場合はあっても、時間経過と共に必ず腐敗する。悪政への防御機構が無さ過ぎるので良くない。あと、現実には超人が存在しないという点が決定的にまずい。

102カラフル

カラフル [DVD]

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クレしん映画で有名になった原恵一監督作品。
・この人はなんか、感動的なモノに憧れ持ちすぎ。泣かせるストーリーを語ることを映画の目的に据えるのは、僕の好みとちゃう。
・とはいえ大事なことを言ってる。若い世代に向ける言葉として、すごく価値があると思う。安易なことは何も言ってない。実に思慮深い
・勉強は、もっとせんとアカンけどな。
・プラプラ様は大根すぎ。
・いのちをだいじに!(意味深)

103.シュレック

シュレック [DVD]

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 ・打倒ディズニーを標榜するドリームワークスの3DCGアニメ。
・アメリカ人もディズニーのオメデタイ感じには突っ込みいれたかったんだなぁ、と思った。成分の8割は皮肉。でも、アンチディズニーを掲げる限り、ディズニー無しで生きられないということですよ。
・よくできてるとは思うけど、あんまり好きではない。本人が「オレ毒舌だから」って言いだしたら冷めるような、そんな感じ?そうだね君は毒舌だね。
・いろんなパロディしてたみたいだけど、アメリカ人じゃないと良く分からん。日本人は楽しみにくい。

 

104.鋼の錬金術師 シャンバラを征く者

劇場版 鋼の錬金術師 シャンバラを征く者 (通常版) [DVD]

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 ・TVシリーズの最終回を豪華にやったって位置づけなので、単品の映画としては語れないモノ。しかもTVシリーズ未見でチャレンジしちゃったんで、あんまわかんなかったんです・・・ゴメン。原作は読んでるから行けると思ったんだよぅ。
・ファンタジーの住人を現実に連れてくるメタ展開は挑戦的。ラストアクションヒーローだね。
フリッツ・ラングなんて、今どきのコわかる?(確かにブラッドレイに似てる・・・)

 

105.カンフーパンダ

カンフー・パンダ スペシャル・エディション [DVD]

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 ・ドリームワークスの3DCGアニメ。かわいくないデブパンダがカンフーする。
・アメリカ人はアニメでバトルするのにここまでエクスキューズがいるのか。血ィのひとつも飛ばしてみせんかい。
・アクションの動画自体は、すげー。カメラの動きっぷりもCGアニメならではで見応えアリ。手書きアニメーションでは実質不可能。
・あまりに現実味のないカメラアクションは押井師匠に怒られそうですが、これに起因するリアリティの無さは、暴力から生々しさを排除したい向きにはむしろ合致しているのかも。
・どれほど天性があろうが、武道ってのはそんな短期間必死になったところで習得できるもんじゃないんですよ。納得のいくストーリーじゃあない。結局ハート様最強とは。朝飯前にゴボウ抜きされた兄弟子たちの思いや如何ばかりか。

 

106.劇場版 機動戦艦ナデシコ The prince of Darkness

劇場版 機動戦艦ナデシコ -The prince of darkness- [DVD]
 

 ・TVシリーズ以降を描いた同窓会映画。戦争が終わった後、ハッピーな体制が構築されてる絵を見せるのは嬉しくもあり、そりゃ作品コンセプトとちゃうやろ、とも思ったり。元の連載シリーズ分が好きなんで、楽しく観ちゃったんですけどね。
・事件の立ち上がりからナデシコメンバー再招集まではワクワクするけど、メンバー揃った途端一気に尻すぼみ。もうちょいストーリー的な山場作れんかったかねぇ。序盤が良かっただけに残念。
仲間由紀恵黒歴史。「アキトの…アキトの…」
・ともかくも、成長したルリルリはかわいい。

107.うる星やつら 完結編

うる星やつら 完結篇 【劇場版】 [DVD]

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 ・うる星やつら劇場5作目、監督は出崎の統さんじゃなくて哲さん。原作漫画の最終エピソードを素直に映画化したもの。
・もういちど鬼ごっこしながら二人の関係を総括する内容で、シリーズのファンには感慨深いものがあります。映画としては、監督の野心が全然見えなくてチョット物足りないですが。原作がいい話だから押井みたいなことせずにママ映像化してくれ、というファンの要望に応えての企画なので、これはこれで問題ないわけですな。

 

108.ランゴ

ランゴ おしゃべりカメレオンの不思議な冒険 [Blu-ray]

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 ・パイレーツ・オブ・カリビアンの監督ゴア・ヴァービンスキーさんが監督した3DCGアニメ。主人公の声もジョニデ。
・いろんなパロディやってるので、わかる人はムフフと思いましょう。マカロニウエスタンは知識浅いんで、アタシにはもひとつでした。
・西部の精霊、イーストウッド過ぎ。

 

109.サカサマのパテマ

サカサマのパテマ 通常版 [DVD]
 

 ・「イブの時間」でやんわり評判の吉浦康裕監督。
・魅力的な設定で興味をひきます。抱き合わないと行動できないイカシた状況で、モエたりしながら見てたらなかなかの良作なんじゃないすかね。僕はそこでキュンキュンする心を失いつつありますが・・・
・広げた風呂敷は畳むのが大変。そこが腕の見せ所だが、イブの時間は畳まなかった。そして今度は元々畳めるサイズにしか広げなかった。大きな風呂敷を畳む技を身につけんと、傑作にはたどり着けんよ。と、観るだけの素人の意見。悪役のおっさんがもう少し魅力的だったり、組織的だったりしたらもっと盛り上がっただろーと思います。映画を仕上げるのって難しいんだなぁ。

 

110.天使のたまご

天使のたまご [DVD]

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 ・押井守監督が趣味だけで作ったわけのわからん映画。
・さっぱりですね。さっぱりでした。
・押井師匠にとって映画の目的は、ストーリーの叙述ではなく、世界観の描写。なので、思い切ってストーリー無しでやってみました(はあと)ってことらしい。映画の形式自体へのチャレンジなので、このストーリーから何を述べたかったのか?という方向で読み解こうとしても、そこに答えはありません。
・道具として使うとラリホーマの効果。

 

111.白雪姫

白雪姫 スペシャル・エディション [DVD]

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 ・約80年前のディズニー映画第一弾、長編アニメーションの夜明け。
・古典にちゃんと目を通してるって満足感のために見ましょう。アニオタの教養ってヤツよ。
・ここで目指したのは「動く絵本」であって、映画ではなかったと思われる。ので、ストーリーのダイナミズムとか、人物描写の掘り下げ方とか、今どきのんとは比べてはいけませんね。今の感覚で見れば、ぶっちゃけドヘタクソです。
・ちっさいおっさん達は手ェ洗うだけに時間掛け過ぎ。
・動画は、現代の水準で見てもハイクオリティ。フルアニメーションも良し悪しだけど、そりゃ凄みはありますよね。

 

112.ファンタジア

 ・すごいです。アニメーションを芸術にしようという志の高さに感服。
・ただし、これは映画ではなくてミュージックビデオ。これは大きな違いであって、同列には語りにくいのです。
・感動したい気分の一方で、ちょっと退屈してる自分がいました。と言うかいっぺん寝ました。

 

113.ピノキオ

ピノキオ スペシャル・エディション [DVD]

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 ・とみに有名な「星に願いを」は、バッタが歌ってたんですねぇ。
・クジラのシーン、波まで全部動かしてやがる。背景動画どころが全部動画ですな。量産型の日本産では滅多にお目にかかれない力技。
・嘘ついたら鼻が伸びるくだりは意外とあっさりなのね。もっと全編通して伸び続けるんだと思ってたわ。有名すぎて逆にちゃんと見てなかった映画の好例。
・終盤、じいさんとピノキオの絆が美しいようですが、ピノキオ人形が完成したその深夜に動くようになって、翌朝学校行けと送り出されて、次の再会はクジラの中ですからね。時を重ねた絆って全くないんですよ。この時代のアニメは、そういう整合性全然気にしてなかったんだなぁ。

 

114.ルパン三世 ルパンVS複製人間

ルパン三世 ルパン vs 複製人間 [DVD]

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 ・ルパン劇場版第1作。
・ルパンのイメージって、多分人によって全然違う。原作漫画を想起する人は少数派だろうとしても、TVアニメの中でも1st、2nd、3rd、その後のTVスペシャルとシリーズごとに全然違う。僕の好きなルパンは1stか2ndのTVシリーズ。基本ルパンは好きだけど、かつての面影もない今時のルパン映画は興味ない。カリ城は名作と言えど宮崎映画すぎるし、僕の思うルパンでやってくれた映画ってのは、結局これだけ。

 

115.アイアンジャイアント

アイアン・ジャイアント 特別版 [DVD]

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 ・ぽっと出のアメリカ製アニメ。監督さんは後に「Mr.インクレディブル」の監督する人。
・異形と触れ合う。異形が迫害される。テンプレート通りの話で、テンプレートの通りに面白いが、正直ピンと来なかった。
・と思ったら世間じゃ感動作扱いらしいぞ。意外。アタシ全然感情移入できなかったんですけどー。あれー
・ぶっちゃけ、アメリカンな絵柄が嫌い。多分それだけ。

 

116.雲のむこう、約束の場所

 ・新海誠の3作目、長編としては1作目。
・この人、中学生くらいの妄想全開だナー。お年頃のときに見れれば良かったろうけど。
・一応SFだけど、あんまり活きてないカンジ。以降の新海作品ではSFしなくなったけど、むべなるかな。
・背景が、一枚絵としてすごくキレイです。

 

117.劇場版トライガン Badlands Rumble

 ・SF風西部劇。地味に人気だった漫画原作のTV連載アニメが、時を隔てて急に劇場版ひり出しました。TVシリーズ中盤あたりのオールスター揃ってた時代の新エピソード。
・「TVアニメの長い版」を超えない内容ではありますが、えらく楽しく観れました。単に僕がトライガン好きだからでしょうが。嘘くさいガンアクションとか、無茶な平和主義の是非とか、すげえ好き。特にウルフウッドが好き。
・カウボーイ・ビバップもそうだったけど、連載シリーズで根本的な決着が着き切ってると、劇場版では同窓会以外やる事がないんですよね。ファンサービスってくらいで考えて、期待し過ぎずに同窓会を楽しみましょうか。
・ヴァッシュ復活のくだりは、さすがにご都合すぎるやろ、と思いましたが。

 

118.9 9番目の奇妙な人形

9<ナイン>~9番目の奇妙な人形~ コレクターズ・エディション [DVD]

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 ・売り文句にティム・バートンの名前があって人形の話なんでストップモーションアニメ?と思ったら普通にCGアニメでした。しかもバートンはほとんど関わって無いそうな。退廃的でファンタジックなビジュアルイメージは確かにバートンぽい。キャラ造形もいい。
・でも、ビジュアル面以外はあんまりコンセプト無かったのかな?ストーリーはなんとなく盛り上がり切らないカンジ・・・。
・2の無駄死に感、もちょっとなんとかならんかったんか。

 

119.くもりときどきミートボール2 フード・アニマル誕生の秘密

 ・1作目が評判良かったんで、予定なかったけど2作目いってみましたな話。
・さすがに1作目のキレはないですが、この無理やり企画でそこそこ楽しめるように仕上げてきたのはむしろ優秀ゆうしゅー。

 

120.うる星やつら オンリー・ユー

うる星やつら オンリーユー(ノーカット版)【劇場版】 [DVD]

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 ・うる星の劇場版第1作、後の大御所・押井監督の初監督映画でもあります。
・話のスケールはでかく、主要キャラは総出演、TVシリーズの映画化としては誰も文句を言わない構造で、実際見て面白い作品ですが、押井監督は「映画たりえていない」とご不満だそう。
・僕なりに咀嚼したところだと、押井監督にとっての映画というのは作り手が何らかを表現するためのモノであって、映画を構成する要素は(映像や音楽や、ストーリーでさえも)、その何かを表現するための手段に過ぎない、ということ。オンリー・ユーには作り手の真の目的たるものがなく、何も表現していない、と。
・今時はただの2時間ドラマも映画と称して劇場公開しますからねぇ。国産映画の中で、ここで言う映画たり得ている映画ってのがどれ程あることやら。

 

121.APPLESEED

APPLESEED [DVD]

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 ・攻殻にあやかって、同じ士郎正宗原作の漫画を劇場アニメ化。当時はCGアニメ創世の時代、新しい技術がどんな映像を作れるのか探ってる感じで、期待感あった。音響も凝ってた。
・でも脚本がヌルい。而して脚本がヌルい。
・原作は硬派すぎるから、一般向けに噛み砕こうってのはわかる。わかるが、これでは精神年齢が低すぎる。分かり易くするのと、安直にするのは別。
・あなたがいない未来なんてー。くさー!ビルからダイビングそうちゃくー。無意味ーー!!
・自分原作ファンだもんで、これには怒っているのだ。伊藤計劃氏もブログで困っておられたぞ。

 

122.宮本武蔵 双剣に馳せる夢

宮本武蔵‐双剣に馳せる夢‐ [DVD]

宮本武蔵‐双剣に馳せる夢‐ [DVD]

 

 ・歴史ドキュメンタリー。何を観ようとしているかあらかじめ分かってないとびっくりする。押井製の歴史秘話ヒストリアだと思ってどうぞ。そもそもこのリストに並べていいものなのか、微妙な内容でありますな。
・現代の日本人に流布したイメージは吉川英治の創作小説に支配されている。放っておけばこれが史実にとって代わる恐れがあって、そういう危機感は持つべきだ。事実を自主的に知ろうとすることが大事。
・自力でこれだけの論を構築した押井の情報収集力と解釈能力は凄まじいですが、これを信用し過ぎたら、それは吉川が押井に入れ替わっただけ。慎重な視点を忘れずに。

 

123.おもひでぽろぽろ

おもひでぽろぽろ [DVD]

おもひでぽろぽろ [DVD]

 

 ・ガキのガキ臭さがリアル過ぎて、コッ恥ずかしくて見れらんないんですよね。もっと年とりゃ面白く見れんのかねぇ。
・この対象の狭さが高畑さん。
・ほっぺの描き方が気になる…アラサーとはいえ20代をそこまでおばさんに描かんでもええやない。

 

124.河童のクゥと夏休み

河童のクゥと夏休み 【通常版】 [DVD]

河童のクゥと夏休み 【通常版】 [DVD]

 

 ・クレしん映画で有名になった原恵一監督の、クレしん離れての第一作。
・河童をみつけてアルフよろしくかくまうけど、一瞬でオクモニックさんにばれてマスコミに囲まれる話。
・いい映画ではあるんだけど、やっぱこの人のセンス合わんわ。感動しましょうって感じの感動作とかキライなんすよ。
・アニメっぽいキャラデザが嫌いなんだろうけど、それにしたってこれはバタ臭いよねぇ。
・冗長。この内容で2時間越えは無い。絞れ絞れ。

 

125.メリダとおそろしの森

 ・ピクサー映画13作目。“あの”ピクサーにしてはパっとしないデキ。やはり13は不吉なのか。
・舞台となる世界の広がり、起こる事件のスケール、内包されたメッセージ、どれも小さい。どうした。
・悪いって程じゃないですよ、レンタルで見て損した気がしないくらいには。
・最大の見所は、スパゲッティヘアーのモデリング
・望みが何であれ熊になるって、そりゃ魔女のばーさん適当すぎるぜ。

 

126.コクリコ坂から

コクリコ坂から [DVD]

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 ・宮崎Jr.再臨。まさか2度目があるとは・・・
・背景美術はさすがジブリ。演出もゲドに比べりゃ相当進歩してますよ。
・「安いメロドラマだ」と自嘲したくせに、安いまんまの何のひねりもないオチ。えっ。それだけ?
・青春しまくってるのはもきゅもきゅする。もっと若いときに見れたらもっと楽しめたんでしょうか。

 

127.さよなら銀河鉄道999 アンドロメダ終着駅

さよなら銀河鉄道999-アンドロメダ終着駅- [Blu-ray]

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 ・銀河鉄道999、劇場版の続編。1作目で作品コンセプトに完膚なきまでに決着が着いてるのに、人気があるからって作られた感がアリアリ。
・で、1作目で付けたはずの決着を着いてなかった事にして、似たようなことをもう一周やった。1作目の感動を台無しにする方向の展開なので、世間的評判が悪いのも然り。
・続編商売に手を染めざるを得なかった大人の事情だね。ストーリーはアラだらけ。それでも、りんたろう監督はこの状況にあっていい仕事をしておられます。
メーテルは今でも偶像として機能するキャラクターだよね。

 

128.WXIII 機動警察パトレイバー

WXIII 機動警察パトレイバー [DVD]

WXIII 機動警察パトレイバー [DVD]

 

 ・押井の手を離れた、パトレイバーの劇場版第3弾。
・どーしてもデキのいい過去2作と比較されてしまうわけで。押井師匠抜きで製作ともなれば尚のこと、過去作との真っ向勝負は避けるのが得策。てなワケかどうか知らんが、主役に新キャラ据える搦め手で来ましたな。
・あまり印象に残らない映画。いかんせん新キャラが地味過ぎるよねぇ。ハタ君の恋愛模様とか興味もてねぇ。
・刑事2人の自宅シーンが多いですが、これは冴子さんの部屋のサイコ度を際立たせる伏線ですね。生活感が染み込んだ部屋と、伽藍堂に巨大写真1枚しかないサイコハウスの対比。

 

129.アリス

ヤン・シュヴァンクマイエル アリス [DVD]

ヤン・シュヴァンクマイエル アリス [DVD]

 

 ・ヤン・シュバンクマイエルの悪趣味アリス。分類は「ストップモーション・アニメ」だけど、観る印象としては実写と理解すべきでしょうなぁ。
・映画と言うよりは芸術ですな。凄味はあるけど見てて楽しいもんかっつーと。趣味が合ったらのめりこんじゃうのもわかります。が、個人製作のレベルを超えないプロダクションでもあります。
・アリス役の子、カワイイけど演技できてないよね。

 

130.攻殻機動隊 S.A.C Solid State Society

攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX Solid State Society [DVD]

攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX Solid State Society [DVD]

 

 ・「映画は撮ったことがない」神山さんがようやく映画を撮った、S.A.Cシリーズの長編。
・でも結局PPVになった。
・この人、上手い話をつくるけど魅せるアクションを描けない人だなぁって印象。動きが淡々としてて燃えないカンジ。投入できるリソースに限界があったのは明らかなので、そこは割り引いて見てあげないとだけどね。
・押井師匠に挑戦するその意気や良し。

 

131.逮捕しちゃうぞ the MOVIE

逮捕しちゃうぞ the MOVIE リマスター版 [DVD]
 

 ・ちょいマイナー目なシリーズの映画化にしては力入ってます。大規模な東京封鎖からの警視庁襲撃とか、起こる事件も大風呂敷。
・パト2に憧れたナ。てことは、踊る大捜査線と源流を一にする作品ですが、なに、負けてないと思いますよ。
・作画面では、大事なカットが静止画だったりして予算の限界が露骨。隠す努力もうちょっとあっても・・・

 

132.うる星やつら4 ラム・ザ・フォーエバー

うる星やつら ラム・ザ・フォーエバー【劇場版】 [DVD]

うる星やつら ラム・ザ・フォーエバー【劇場版】 [DVD]

 

 ・うる星やつら劇場版第4作。作れば元取れる手堅い商売ですから、とりあえず作る罠。
ビューティフル・ドリーマーっぽいモノを作ろうとした感アリアリ。それ系の作家性でもないのに、それっぽいものを作ろうとしたって、そりゃ上手くいきませんよ。ストーリーが解り難いのは、難解さじゃなくて説明不足のせい。日記とか意味ありげな伏線投げっぱなしボンバー
・映画として仕上げる前に公開しちゃったカンジ?個々の場面はいい雰囲気醸し出してるし、やろうとした(と思われる)ストーリーも面白げだし、へこたれずに最後まで頑張ったらいい映画になってたかも。または、観る側が完成図を補完しながら見てあげれば。
鬼姫コスのラムは美しい。

 

133.獣兵衛忍風帖

獣兵衛忍風帖 [DVD]

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 ・川尻監督の、その名の通り山田風太郎忍法帖っぽいけど一応オリジナル原作の、劇場アニメ。素直に忍法帖原作でアニメ化するのはダメやったん?
・本作、アメリカでえらく人気あるそうな。確かに、ニンジャがニンジュツでバトルする内容は、間違った日本妄想掻き立てて外人ウケしそう。
・エロと暴力は映画の華。アニメでここまでがっつりやるのは国産でも珍しい。いいぞもっとやれ。
・デザインセンスがダサダサでちょいと笑っちゃいますがね。昔はこんなだったよね。

 

134.海がきこえる

海がきこえる [DVD]

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 ・ジブリの若手(当時)が宮崎駿抜きで作った長編アニメ。TV用であって劇場公開はされてないそう。
・ムトーは不幸な家庭環境でも弱みを見せずに気丈に振舞う、自律的な女。杜崎君は行動力があって意思の強い男。と、描きたかったんだろう。でも印象に残るのは、わがまま糞女と振り回される男の図。ムトー、もう少しかわいげあるようにならんかったんか。
・製作者が表現せんとしたであろう、不器用な青春模様はわりと好きですが。

 

135.11人いる!

11人いる! [DVD]

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 ・萩尾望都さんのSF短編漫画の映像化。方程式モノ的な、古きよきSFの味。
・伏線張りと新事実の開示のテンポがいいので、楽しく見てられます。
・終わってみれば、11人目の存在が意外と事態の進展に影響してないので、ストーリー作成テクとしてはもう一押し欲しかったところですかね。
・宇宙船とかの描き方は、やっぱ平凡。あくまで出来のいい原作の手堅い映像化ってとこで、映画としては驚きがないかなぁ。出崎お兄ちゃんはこういうタイプなのね。

 

136.ライオンキング

 ・キャラが出揃った時点でこの先何が起こるか全部わかる。そして想像を少しも外さない一本道ぶり。子供向けならこれでいいって?ホントに??
・最後までライオンの捕食シーンを描かない。臭いものにはフタのPTA方式。露悪趣味で言ってるんじゃなくて、この物語に正面から向き合うならば避けて通れない部分だったはず。子供向けだから、は言い訳にならない。
・だから、ドリームワークスがマダガスカルを作った。

 

137.ホーホケキョ となりの山田くん

 ・あっこの地味さ、高畑さん!
・アニメ表現の可能性に挑戦して、なにか達成しておられます。
・大昔にTV放映を見たきりなので、細部を語るほど記憶にありませんが、わざわざ見返そうって意欲を起こさせない地味さがあります。やっぱそれはダメなことだよね。メッセージがあろうが技術的にすごかろうが、観終わった時に「ああ面白かった」って思うかどうかが一番大事だし。。。

 

138.老人Z

老人Z HDマスター版 [DVD]

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 ・大友克洋が原作・脚本。大友っぽいブラックユーモアで、「最臭兵器」のカンジに似てる。
・高齢者問題は、個人的には笑うに笑えないところがありますなぁ。こういう「笑いにくい笑い」が好きな人には相当気に入られるんじゃないすかね。

 

139.スプリガン

EMOTION the Best スプリガン [DVD]

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 ・ちょっと人気あった漫画の劇場アニメ化。総監修に大友克洋ってことでちょっと話題になったけど、監督でもないしつまり何やったんだろなぁ。アニメに大友さんが関わっても、大してイイことは起こんないのが常ですが。。
・箱舟編って、原作のオチがわりと尻すぼみなんで、映画では上手く改変して盛り上げてくれたらいいなー、って期待して見に行ったんですが、そこは原作に忠実にそのままでした。えー
・アクションは良く動くんで、そこは見所。
マクドゥガル大佐は大根すぎ。

 

140.ベクシルー2077 日本鎖国

ベクシル-2077 日本鎖国- 通常版 [DVD]

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 ・APPLESEEDのチームが作った国産CGアニメ。ってことで、その仕上がりも推して知るべし。
・(意外にも)話の入り口までは結構期待感もたせる。日本どないなってもーてんー、とワクワク感煽るが、話が進んでみれば、まあ、やっぱそんなもんだな。
・オリジナルなんで、どの原作もレイプされてないんで、その分だけ好感持てる。

 

141.スチームボーイ

スチームボーイ 通常版 [DVD]

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 ・伝説の大友克洋監督が、すげー時間かけて作り上げた超大作。はずだったけど、見事にずっこけた。あの面白い漫画を書きまくってた大友克洋は今どこへ。。
・声優がヘタ!主要キャストがまとめてヘタ過ぎる。こういうのは役者以上に、リテイクさせられない現場の問題だと思う。
・ダメなばっかじゃないよ!作画はハイクオリティだよ!
・どんな職業であれ、ある一連の仕事をきっちり完結させるのは、実は難しい。時間をたっぷり掛けたら良くなるかと言うとそうでもなくて、変に長引くのはむしろ泥沼に嵌った証拠。泥沼化したが最後、船頭多く船山を登り当初の目的は忘れ去られ終わらせる事自体が目的に取って代わり完成度は二の次に…などなど、苦労の割に出来が悪い。あーそういえばこの映画、ずいぶん制作に時間がかかったらしいですねー。

 

142.ももへの手紙

ももへの手紙 [DVD]

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 ・押井一門、沖浦さんの「人狼」に続く監督2作目。師匠の手を離れた結果は…人狼の悪いところが残ったな…。丁寧なのはいいけど、これはさすがに冗長だよ。
・ギャグが全体的に滑ってる。これ、この映画の上手くいってないところの本質じゃなかろーか。場面場面で表現せんとしたモノは想像つくんだけど、現実そんな風に感情が動かされない、お寒いカンジ。笑いどころだけでなく、感動しどころも寒い。
・カメラで撮ったような作画はすごい。広角/望遠の切り替えを画で描いてたり。ピント合わせまでやる。腐っても押井一門。このうまさが映画に結び付けばなぁー
・ちなみに私好きで瀬戸内の島にはよく行きますが、まさにあんな感じです。だからこそ、好きな映画になって欲しかった。これでは不満が残るばかり。

 

143.ゲド戦記

ゲド戦記 [DVD]

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 ・宮崎Jr.登場。偉大な父親と比べられるのは宿命とはいえ、これではねぇ…
・それなりの努力も経験もなく、映画監督なんてできないってコトを明確に示している。映画を構成するにあたって、省略すべきこと/語るべきこと、の選択が、彼は根本的にわかってない。
・そんな訳で、なにぶん、つまらない。原作は面白いんだろーなぁーってことは伝わりました。
・作画や背景画の技量はジブリさまさまなので、ゴミ!とまで言えないのがなんとも語りにくい。

 

144.ルパン三世 ファーストコンタクト

ルパン三世 EPISODE:0 ファーストコンタクト [DVD]

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 ・雨後の筍が如く制作されまくるルパンのTVスペシャル第14弾。
・TVスペシャルにしては、面白いです。でも一味の出会いって奥の手を使ってこのレベルでは、ちょっと寂しいかな。こういう大事な話を劇場でなくTVスペシャルのネタに扱う時点で、制作陣にはルパンに思い入れが無いってことだ。
・敵キャラの造形もう少し考えてもイイよなぁ。モブのデザインだろこれは。
・ルパンが五右衛門対策で火を使ったり、ファーストシリーズをちゃんと踏襲してるのね。本家はイルカの水鉄砲使用でもっとナメてたけど。

 

145.エクスマキナ

エクスマキナ -APPLESEED SAGA- スタンダード・エディション [DVD]
 

 ・APPLESEEDの続編、しろまさ原作から離れたことでいよいよ底の浅い作品になった。原作ファンには腹に据えかねる。
・民間人だから撃つなーみたいなくだり、そのくらい想定してスタンガン持って来い。作ったやつスタンガンってもんを知らんかったんか。それとも知ってるけど無視してドラマっぽいシーンを作りたかった?どっちにしろ浅い。浅すぎる。
・ラストのモブ敵とバトるシーンは、マトリックスで見たな。
ジョン・ウー連れてきても、あのおっさんもシナリオ作る力はないから・・・
・多分、冷静に見直したら、ここまで貶す作品じゃないんです。わかっちゃいるんだが、嫌いなんだ。

 

146.うる星やつら3 リメンバー・マイ・ラブ

劇場版 うる星やつら3 リメンバー・マイ・ラヴ [DVD]

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 ・うる星やつら劇場版第3作。ここからは押井の手を離れた。
・これもちょっとビューティフル・ドリーマー引き摺ってるなぁ。4作目より話のつじつまは合ってるけど、その分スケール感もこぢんまり。聞き分けないガキが無茶しただけって話に見えちゃう。

 

147.星を追う子ども

 ・新進気鋭の新海誠の監督4作目。前作の「秒速~」までの一貫したテイストからは路線変更してファンタジーにチャレンジ。幅を広げようとしたんだろうが、得意の路線以外の引き出しがカラッポであると露呈してしまった。
・既視感のあるシーンが連発。元ネタがほとんど宮崎駿ってのはちょっと安易すぎる。
・もうわかった。余計なことしなくていい。秒速~の童貞臭は馬鹿にしてたけどアレも立派な作家性だし、それをどっぷり描き切れば価値ある映画が作れる人ですよ、新海さんは。まぁ・・・この人が童貞卒業してしまったときに、残るものがあるかが心配だけどね。
・と思ってたら、この次に出した短編映画「言の葉の庭」は秀作でした(短いのでランキングには入れてないケド)。これはなんと秒速を大人の感性に咀嚼しなおしたよな内容。この人は、この作家性をひたすら先鋭化させた先にこそ、我々の見たことがない情緒的な世界を紡ぎだせると証明してくれました。次の長編は割とマジ期待してる。

 

148.うる星やつら いつだって・マイ・ダーリン

うる星やつら いつだって・マイ・ダーリン【劇場版】 [DVD]

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 ・うる星やつら劇場版、作りも作ったりついに6作目。ルパンやクレしん程には定番化できなかったのは、良くも悪くも押井のせいだな。
・尺は1時間チョイと短いし、完全にちょっと豪華なTVアニメ。押井の呪縛も解けて、高橋留美子の偉大なるマンネリズムをどっぷり再現。TVシリーズ楽しく見てた人なら、その延長で見たら楽しいでしょう。
・ホレ薬取り合いながら痴話ゲンカって、ホント高橋留美子だなぁ。
・ラムの顔の作画が、ちょっと好きくないです。ラムの顔に絞れば、4作目の「ラム・ザ・フォーエバー」が好き。
・弾が無限に出るバズーカってこのテのギャグアニメじゃ普通だけど、押井は絶対やらんかったナ。

 

149.ルパン三世 DEAD OR ALIVE

ルパン三世 DEAD OR ALIVE【劇場版】 [DVD]

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 ・原作者モンキーパンチが御自ら監督した劇場第6作。
・話はともかく画の見せ方が説明的でテンポが悪くて、映画としてビミョウ。本来、アニメ化された以上は原作とは別個の作品とみるべきであって、原作者と言えどクチバシ突っ込んでいいもんではない。餅は餅屋。
・とっつぁんが有能に描かれてるのは、好き。本来そうだったわけだし。
・変装を見抜けないナノマシンってのは、どうですかねぇ

 

150.幻魔大戦

幻魔大戦 [DVD]

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 ・鳴り物入りで製作された作品。子供向けじゃない単発のアニメ映画を真面目に作ること自体、当時は挑戦的な試みだったそうな。
・歴史的な意味合いがあるにしろ、今のセンスで見るにはかなりキツイ。
・のっけからダンシングばばあに苦笑。絵柄の古臭さが恥ずかしい上にストーリーもなんか行き当たりばったりだし・・・いや、古いからったってこりゃねぇよ。
・男友達とツッコミながら見るなら、いけるかな。
・音楽監督キース・エマーソンでびっくり。そういえばそんな感じ・・・か??当時のキーボード音では、映画音楽には安っぽく聞こえちゃうなぁ。

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