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本と、映画に思うこと。その他、諸々のこと。

読書録1: 「銃・病原菌・鉄」 ジャレド・ダイアモンド

その筋ではたいそう評判がよかったらしい。雑学系の本読みさんなら必修。

大航海時代、世界に打って出たヨーロッパ諸国に、他地域の国々は全く歯が立たなかった。なぜ、ヨーロッパがそれほど強かったのか?
それは、ヨーロッパだけが強力な武器(銃と、病原菌と、鉄)を持っていたから。じゃあ、ヨーロッパだけがいち早くこれらを手に入れたのはなぜ?
これにもちゃんと理由がある。ただの偶然じゃないし、一部の天才の個人的な成果でもないし、ましてや、白人が他の人種より優れてたわけでは、断じてない。本当の理由は、ヨーロッパ地域における地理であり、気候であり、栽培化可能な植物種の分布であり、家畜化可能な動物種の分布であり。この多岐にわたる要因どれもが、ヨーロッパに有利に偏っていたのだ・・・

歴史を左右した本当の要因が見えてくる本。少々、環境要因に原因を持って行きすぎという意見もあるよう。実際のところ、個人の成果と環境要因と、重みの比率がどのくらいだったか判断するのは難しい。この本で環境要因に重点を置いたのは、今なお実在する人種差別、白人優越の思想に対する問題提起の意味合いが強いのでしょう。

驚かされるのが言及する方面の広さ。あっちもこっちも方々の学術成果を総合して、議論が展開される。共著でもなくおじさんひとりで書いてるのに、この視野の広さはちょっと感動的だ。歴史関連の本を漁っても、これほど俯瞰で歴史を捉えた論には出会えないんじゃあるまいか。歴史でも地理でも生物でも、何かひとつの専門家じゃあこんな見方は無理。現代では学問ってのは、分野それぞれが深くなりすぎて、全ての領域をマスターしたダビンチ的万能の天才が登場するのは事実上不可能だけど、そんな今でも、今だからこそ、レベルの高いゼネラリストが必要なのかも。この「銃・病原菌・鉄」のように、マニアックな知識の妙所を統合して全体像を描き出せる人が。