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本と、映画に思うこと。その他、諸々のこと。

読書録11: 「文明崩壊」 ジャレド・ダイアモンド

文明崩壊 滅亡と存続の命運を分けるもの (上)

文明崩壊 滅亡と存続の命運を分けるもの (上)

文明崩壊 滅亡と存続の命運を分けるもの (下)

文明崩壊 滅亡と存続の命運を分けるもの (下)

いわゆる環境問題を、すごく理性的かつ体系的に分析した本。書いたのは「銃・病原菌・鉄」の著者さん。歴史をひもとけば、局所的な文明が環境問題を理由に滅んだ例は、既にたくさんあるようで。これらの事例を元に法則性を見出して、現代の環境問題を再解釈しようというワケ。恐ろしく高い位置から歴史を俯瞰する眼をもつこのダイヤモンドさんのこと、その分析結果の明晰さにはまったく舌を巻きます。くるくる、くるくる。この本を読めば、環境問題の理解レベルが格段に上がる。

前半は過去の事例の紹介。実例をもって説明してくれるし、そのまとめ方が超明快なので、文明が持続できる条件ってのをガツっと頭の芯まで理解できる。要するに、文明をやってれば必ずいろんな環境負荷をばら撒くし、そのどれかひとつでも自然の回復力を上回っていたら、その文明は持続できないってコト。むしろ持続できる方が難しいんじゃないの??こうして、実際に崩壊した歴史の例を並べられると、結構ビビる。現代社会は、今のままじゃ持続できそうにないと気付いて、方向転換を図っているところ。間に合うのか?!

後半では、少なくとも現代がどういう状況であるかが語られます。まぁ、間に合うかどうかは、誰にもわかりゃしないな。渦中にいる我々は、少しでも長く持続するよう努力するしかない。

現状把握もまた、著者さんの明晰さが光る。その中でも特に、企業がカネをケチったせいで起こる公害についての解釈、これはもう、この本の白眉。ダイアモンドさんは、ホント理知的な人だね。

公害問題で敵役になるのが、企業。敵役には素直に悪党でいて欲しいのが人情だが、コトはそう簡単じゃない。企業が利益を追求するのは、強欲ではなく、それが義務だからだ。利益を出して社員に給料を払うのは、実はすごく難しいことで、いい人ぶって無駄遣いするお金なんてどこにもないのだ。中国の企業が公害を垂れ流しているのを非難するのは簡単だし、それは確かに非難に値する行為だケド、日本だって昔は似たような時期があったじゃないか。それは、経済と技術の発展度合いから、どんな国もいつかは通る道なんだ。
だから大事なのは、環境問題にまじめに取り組むことが経済性に適うような状況を、我々消費者が作ることだ。法制による公害問題へのペナルティや、環境に配慮された製品を選択する消費者の意識。例えば林業なら、環境に配慮した木材が、それを理由に買ってもらえるなら、企業は環境に配慮するだろう。必要なのは、環境に配慮したものを選ぶ、消費者だ。

予断を許さない厳しいこの状況にあって、我々が歩むべき道を、この本は明確に示してくれている。この先も現代人をやってくなら、この現実は逃げずに向き合ってゆかないと。