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剣道における出鼻面の強さについて

出鼻面というやつ、面に面で迎え討ってなぜ勝てるのか。結果的に相面になるのに、後出しで勝てるはずないじゃないか…と、最初は思う。だが勝てる。勝てるのだ!出鼻面が現実勝てるという感覚を得るまで、出鼻面を体得しようという気にはなれないだろうが、その躊躇は上達を遅らせる。出鼻面は優先的に身につけるべきスキルだ。カミュにぶんしんを、マルティナにばくれつきゃくを、少年剣士に出鼻面を。

極まればもう、相手が打突を開始する前、間合いを詰めるなどの予備動作にかぶせてぶちこむことができる。相手はまだ打突を始めてもないのに応じ技だけ炸裂する…最高の決まり手だが、これはレベルの高い話。まずは面に対する応じ技としての出鼻面に納得する所に参入障壁があるので、これを解消してもらいたい。

「相面」という単語をさっき出したが、そこからイメージされる「相対した両選手が同時に飛び込み面を打つ」という場面は、実はほぼ無い。実際にあるのは飛び込み面とそれを迎撃した出鼻面であり、両者は対等ではく、勝つのはほぼ間違いなく後出しの出鼻面側だ。この2つには大きな違いがある。

両者の違いを生むのは、間合いだ。面の速さの律速になるのは切っ先を動かす速さではなく、踏み込みの速さなのだ(この気付きがすごく大事!)。だから、間合いが近いほど速く、遠いほど遅い。一足一刀からの面は最も遅い面、その場で打つ面は最速の面。

迎撃する側は、その難行である間合いを詰めるくだりを相手がしてくれるので、前へ進む必要は一切ない。こんな有り難いことがあろうか!据え膳よろしく戴きますとばかりにその場で打てばよく、出鼻面は確実に飛び込み面より速く踏み込みを終える。つまり先に当たる。

だから安心して面で迎え討て。

イメージ付けに、第六十二回(2014年)全日本剣道選手権の決勝、竹ノ内選手vs國友選手の動画を。7:42~、一本先取した竹ノ内選手が攻め立てる國友選手を呼び込んで、ほぼ同時の面の打ち合いに持ち込んでの一本。同時なら呼び込んだ側が勝つ、の好例。

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