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読書録16: 「自己組織化と進化の論理」 スチュワート・カウフマン

自己組織化と進化の論理―宇宙を貫く複雑系の法則 (ちくま学芸文庫)

自己組織化と進化の論理―宇宙を貫く複雑系の法則 (ちくま学芸文庫)

 

 ランダムな事象が大量に集まると、総体のふるまいに一種の秩序が現れる・・・「複雑系」の概説。複雑系はカオスやフラクタルにも通じるけど、そういうのよりもっと現実的な、現実目にする現象を説明するための理論。この本でのターゲットは生命発生と進化、これを数学脳で再解釈する。既存の理解の仕方を、ガラッと新しい別の枠組みに置き換える試みで、こういうのが上手くいくとスカーッとする。これぞ理解する喜び!

序盤の生物発生の話が、特にキレキレで大好き。
生物細胞の中で起こってる化学反応は超複雑。分裂する時には中の分子が全部倍に増えるが、この経緯が理解不能に複雑で、ある分子Aはある化学反応の触媒になって、別のある分子Bが生成されて、その分子Bが触媒になって分子Cが生成されて・・・の繰り返しで全部の分子がきっちり複製される。目的意識のない偶然の産物で、そんなんできる?いくら時間の淘汰を経たからったって、そんなのむりむりむりむりかたつむりよ!
で、そこで複雑系の出番。この細胞の触媒サイクルをもう一度ゼロから再現しようなんてのは確かにかたつむり。ここは一度頭を切り替えて。
何の意図もなく適当に拾った分子Aにも、何か触媒できる反応のひとつくらいあるだろう(たぶん)。それでできた分子Bにもまた、生成を助けられる分子Cがあるだろう。こんなことがずっと続いてたら、最初の分子Aを生成できる分子Zもいつか登場するんじゃね?という話。ここには最終的に生物を作ろうなんて大それた目的はいらなくて、ランダムな触媒作用が累積するだけでいい。とにかく分子の種類さえ多ければ。分子がいっぱいいっぱい目も眩むほどいっぱいあれば、いつかは触媒作用が閉じたサイクルになる。ここでネックになる分子の種類ってのも、数種類のアミノ酸がランダムに重合したポリマーなら、順列組み合わせで種類は無限にできるというマジック。どんなサイクルになるかは、やってみないと分からないけど、何某かのサイクルはたぶんできるし、結果出来上がったのが偶々、今ある生物細胞だったってこと。この理解からいくと、もう一度生命のスープを作ったら、きっと今とは違うサイクルができて、今とは違うシステムで動く生物が進化したかもしれないって訳ですね。

こんな風に、ランダムが山と積もったら秩序が浮き上がってくるのが、この複雑系の考え方。イカにも色んな現象に当て嵌めれそう。この本の中でも色々やってるけど、経済学とかインターネットとか、色んな応用されているよう。

ただ、今ある物の解釈の枠組みを変えることはできても、新たに何かを予測するって形で機能してないようで、そこはまだまだ複雑系の未熟なところ。伸び盛りって感じで、むしろアツイっすね。