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本と、その他諸々のこと。理系的なこと。

人狼 鑑賞メモ

押井映画咀嚼シリーズ。 攻殻と同時期の作品、セルアニメ最後の戦い。

人狼 JIN-ROH [DVD]

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・全編でモチーフになる「赤ずきん」の物語はもともと、赤ずきんが狼に喰われるだけのお話。無垢な少女が理不尽にも食べられるカタルシスが本質だ。 猟師が狼をやっつけて助けるくだりは、子供用にあとから追加されたもので、本来そんな救済はないと知っておくこと。

・主人公、伏に、重ねられる狼のイメージ。狼を従える伏。博物館でも背後に狼の剥製。素朴そうな伏の顔は狼に見えないが・・・??主人公は、人か、狼か。匂わせつつも断定しない演出がミソ。

・ヒロイン、圭に重ねられる赤ずきんのイメージ。 赤いフードを被って登場する。 組織名「赤ずきん」、赤ずきんの朗読「女の子は鉄の服を着せられて…」、など。幸薄そうな少女は、物語の結末として食べられてしまう・・・??

・冒頭はセクトvs特機隊。地下道でジバクちゃんを追い詰める、感情のない「装甲服の顔」。 自爆の後、「装甲服の顔」を外して「生身の顔」を見せる伏。
・「なぜ撃たなかった?」繰り返される問いは、「お前は人か、狼か」の問いと同義。人ならば撃たない。狼ならば撃つ。しかし伏の答えは定まらない。訓練場面では「わかりません」、辺見の問いには「俺は撃つつもりだった」、不安定な伏の心理。
・ロッカーネームがカットイン、「ふせ」が「布施」ではなく「伏」であることに注目。にんべんに犬。人狼??
・クライマックス、伏が装甲服を着る。無表情な「生身の顔」が「装甲服の顔」に隠される。ここで教官曰く、「あれが本当の彼の姿だ。我々は、犬の皮を被った人間じゃない。人の皮を被った、狼なのさ」
つまり、装甲の顔(狼)こそが伏の本性。生身の顔(人)は、偽物だったのだ。装甲を 外す / 着ける 行為と、形容としての「仮面を脱ぐ / 被る」は逆転している。遡れば、ジバクちゃんとの遭遇が人の皮を被った瞬間。ここに至ってついに、伏は人の皮を脱いで狼に戻った。
・釣り人の格好したおっさんは、図書館で伏をチラ見したおっさん。電車内の視線のヌシと思われるおばさんもいる。みんな人狼のメンバーだったわけで、様子のおかしい伏は、事態の当初から監視されてたってわけだ。
・冒頭、人の皮を被った伏は撃たなかった。
辺見叫ぶ。「お前だって、人間じゃねぇかぁぁくぁwせdrftgyふじこ」
でも撃ちまくる伏。どばばばば。この時の伏は、まさしく、狼。
じゃあ、、、圭も撃つの? 
 

狼は、赤ずきんを騙して誘い、喰い殺す。

それで終わり。救いはない。

伏は圭を撃つ。

 

彼に、騙したつもりはなかったにしろ…

 

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