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本と、その他諸々のこと。理系的なこと。

機動警察パトレイバー2 The Movie 鑑賞メモ

押井映画咀嚼シリーズ。攻殻の次は当然これだ。
機動警察パトレイバー2 The Movie。気が付いた演出抜粋。

 

・冒頭。戦争の前線にいる部隊と、後方で戦争をしているつもりの無い指揮。この映画のテーマに関する問題提起。これが柘植の動機。
・会議帰りのしのぶさんの車。フロントガラスにナビ情報が映る。今実際に検討されてて、実用化できるかもしれない技術。できるとしてもよそ見運転になる恐れがあるので、扱いが難しいそうな。
・足の長いレイバーの警察車両「ロードランナー」は渋滞中でもすり抜けられる。これは便利!
・荒川との会話@夜の車内。街灯がリズミカルに車内を照らしては通り過ぎてゆく。夜の車内は押井のよく使うシチュ。(ex.うる星2のさくらさん&夢邪鬼、攻殻の中村部長&Dr.ウィリス)
スクランブル。コード名「トレボー」「ウィザード」「プリースト」「ワイバーン」はWizardryネタ。
・空港職員名言「じょうだんじゃねぇ~」。ここだけ声優へたすぎないか?
・後藤&荒川、水族館で密談。魚はコミュニケーションの偶像。(ex.攻殻の冒頭、うる星2のラム&夢邪鬼)
・水族館からの帰り、船上の荒川の台詞は、表立って登場しない柘植の代弁。主犯がほとんど登場せず、共感する人間にその目的思想を代弁させる構造はパト1・2で共通。1でその役を担ったのは後藤だが、2では荒川。今回、後藤は1歩引いた位置にいるが、それでもその思想は完全に吸収している。
・荒川名言1「正義の戦争と不正義の平和の差は、そう明瞭じゃない」
例えば朝鮮での代理戦争で生まれた物資需要で、日本はがっつり儲けた。戦争の実態は人に押し付けて、その成果だけはしっかり受け取った。ここで言う、不正義の平和。戦争の前線を他所に押し付けるのが、平和なのか?昨今の集団的自衛権の論争も、こういう視点があれば答えは明白。
・荒川名言2「戦争だって?そんなものはとっくに始まってるさ。問題なのは如何にケリをつけるか、それだけだ。」
不正義の平和を続けてきた日本は、実は戦争の後方にいただけだ。戦争をしていることすら忘れた東京に、柘植は戦争の前線を見せつけようとしている。
・荒川名言3「この国は、もう一度戦後からやり直すことになるのさ。」
嬉しそうに笑う荒川。この笑みは、パト1で帆場を語った後藤の笑みと同じ。
・クライマックス1、自衛隊が東京に配備される。東京が戦争状態に突入。 静かに緊張した東京の街。それでも継続される日常。相変わらずの満員電車。 戦車隊員と記念撮影。日本の戦争は、こんなもん?
・クライマックス2、攻撃ヘリ起動、「ゴングゼロより各機、状況を開始せよ」。コード名が映画冒頭のシーンと同じ。彼らはあの時から今まで、ずっと戦争を続けていた。
・情報と交通が遮断され、静止する東京。日常を継続できない、いよいよ戦争らしい状況へ。
・野明と遊馬の車。二人の関係は漫画版でも濁されたまま終わっていたが、結婚したのかも?少なくとも同棲はしてそう。
・幻の地下鉄新橋駅、実在するらしい。タモリ倶楽部的。
・ここまで演出された偽物の戦争は、自衛隊との決戦などではなく、数名の警察官の突入によって終結する。柘植のねらいは既に完遂されており、再結成第二小隊の突入は、広げきった風呂敷をたたむ作業。柘植も、終わらせてくれる人を待っている。
・しのぶさんと柘植、視線は合わないが手がえろい。ひねくれた大人の恋愛事情。
・犯人にたどり着くラストステージは、鳥まみれ。これはパト1と同じ。表情の無い目、空を飛ぶという行為が、 彼岸に到達してしまった思想犯の象徴なのか。
・そして東京は、偽物の平和を取り戻す。
柘植「見ていたかったのかも知れんな。この街の、未来を。」
結局柘植は、偽物の平和であってもこの街の未来を見ていたかった。東京を否定はしたが、壊したかったわけでもない、否定と肯定の入り混じった答え。

 

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