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読書録10: 「気候文明史」 田家 康

気候文明史

気候文明史

歴史を左右するもの。学校の授業では、個人の名前がクローズアップされるが、もっと俯瞰で歴史の流れを捉えれば、人は、人を取り巻く環境に強力に支配されている。それを説いたのが、ジャレド・ダイヤモンド氏のかの名著、「銃・病原菌・鉄」。ここで論じられた要因は、地理、気候、土壌、動植物種の分布などなど。その言及範囲は恐ろしく広いが、それでも語り残したことはある。僕でも気付いたそれが、これ。気候の変動。
幸い、僕の望み通り、気候変動の切り口から歴史を語った本はもいくつか見つかった。最初に手にとって読んだのはブライアン・フェイガンの「歴史を変えた気候大変動」だったけど、言及範囲が1300年~1700年ごろのヨーロッパに限定されてたので少々食い足りず、範囲の広そうなこの「気候文明史」を積み足した。正直、こっちだけで十分だったかな。

時間スケールを広く見れば、気候って、実は結構ぶれるらしい。個人が経験するのはせいぜい数十年、それでも記憶をたよりに比較するには長すぎる年月なので、気候が変動なんて体感としてはおよそ理解できない。しかし、客観的なデータを数百年分、あるいは数千年分、なんなら数万年分、広げれば広げるほど、どんどん違った面が見えてくる。幸いにも現代テクノロジーは過去数万年の気候データを用意してくれている(!)。そのデータを眺めてはじめてわかることに、まさに歴史は、気候の変動に振り回されてきたのだ。温暖になれば富み栄え、寒冷化や乾燥化が起これば世は乱れる。1300年~1800年あたりは、ここ数千年では比較的寒冷化した時期で、飢饉が後を絶たなかった。が、ここ10万年で見れば、ここんとこの1万年はまとめて超恵まれた温暖な気候らしい。はじめ人間たち、よく生き延びたな。

で、気になる近頃の地球温暖化についてだ。本当に起こってんのか。起こってるとして、どのくらい深刻なのか。まとまった議論って異常なほど聞かないよね。この本読んで、ようやく見えてきたよ。
まず、温暖化はやっぱり起こっている。原因も人間の活動とみてよさそう。では、それは過去に類を見ないほどの大変動かというと、そうでもない。地球開闢以来、気候は激変してきたし、それと比べりゃ現時点での温暖化なんて全然大したことない。良くあることだ。が!それでも、この温暖化は脅威なのだ。人間の営みは、ほんの昨日までの気候環境にべったり依存していて、気候がちょいと身震いするだけで、さっぱり立ち行かなくなってしまう。科学が発達した今も人間は気候変動の脅威に対して、あまりに脆弱なままだ。
ちなみに、そろそろ10万年周期の氷期が来る頃合みたいなので、もう100年もしたら必死にCO2排出して暖をとるようになるかもしれんぞ。この10万年周期に論理的理由はまだ見つかってないので、こないかも知れんけど。CO2削減作戦が大成功したとして、それで未来永劫安泰なんかって言うと、全然そんなことないよってことです。
結局、気候の維持なんて人間の力でどんだけできるかわかんないけど、自分が生きてる間くらいは維持する努力をするしかないし、そのくらいしとかないと子孫たちの世代に顔向けできないでしょう。