読書録2: 「これからの『正義』の話をしよう」 マイケル・サンデル
これからの「正義」の話をしよう――いまを生き延びるための哲学
- 作者: マイケル・サンデル,Michael J. Sandel,鬼澤忍
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2010/05/22
- メディア: 単行本
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ハーバードの哲学系の教授さんの、授業を書籍化したもの。NHKで「ハーバード白熱教室」と題して放送されて、ずいぶん評判が良かったそうだ。
テーマはずばり、「善悪を公平に判断するための基準はあるか?」
誰しも、善悪については自分なりの判断基準がある。そして、その基準には自分なりに正当な理屈もあって、自分の正しさに相当の自信を持っているもの。でも、この本を読み進めると、判断に困るような事例が次々紹介される。そして、「君ならどう考える?」と問いかけてくる。当初用意してた理屈に固執して判断しようとすると、どうもそれじゃまずい事例にぶつかる。こうなると、納得できる結論になるように理論を微修正するわけだけど、それってつまり、直感で結論は出てて、ほしい結論が出るように理屈を後付してるってことだ。
この本の中では、歴史上の哲学者たちが考えた正義の理屈付けの例がどんどん出てくる。ほぼ網羅されてるんじゃないかってくらい。僕の用意してた理屈も、十分サンデルさんの想定の範囲内だった。自分の正しさがさほど特別じゃないと思い知らされる。そして、僕自身を含めた、誰の考え方であっても、グレーゾーンの状況に対して万人が納得する答えを提供してはいないと示される。
これでは、究極的に正しい善悪の判断基準なんてないって証明するようなもの。じゃあ結局どうしろってんだってことだけど、こういう思索を一周して、自分が正しいとは限らないと思い知っておくことに意味がある。自分に対して距離を置けるようになれば、話し合いの余地も生まれるというわけだ。