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本と、その他諸々のこと。理系的なこと。

空中逆上がりと空中前回りの物理


素人鉄棒演舞 前と後ろの支持回転

空中逆上がりと空中前回りに関する、物理的考察について。正式には後方支持回転と前方支持回転と呼ばれる技のこと。

どちらも上半身を落下させた勢いでくるっと鉄棒を一周する技だ。でも手の摩擦などなどでエネルギーをロスるので、漫然と保存則に従っていては元通りには戻れない。エネルギー保存則を打破するポイントは、この運動が落下である一方で回転であるということ。つまりは相も変わらず、姿勢制御による慣性モーメントのコントロールがキモである。

①前半=上半身が落下
 慣性モーメントを大きくして、大きな角運動量を獲得する
 →背筋を伸ばし、首も伸ばす。
②後半=上半身が上昇
 慣性モーメントを小さくして、角速度を上げる
 →猫背になり、首をうつむけて縮こまる

これだけ。簡単でしょ?…と言うは易しだが。なにぶん前半は落ちてるわけで、落ちてる時は首をすくめて縮こまるのが抑えがたい本能というもの、そこで背筋を伸ばせとは酷だ。つまり回転技習得の真髄は、恐怖心の克服という精神論がその大勢を締めるのである。

ここまでの話は、鉄棒の周囲を回転する技では共通だ。例えば、足掛け前転&足掛け後転、天国回り&地獄回り、など。私はできませんが・・・大車輪でも同じなはず。

また、鉄棒の反対側に出ている下半身は逆に動くので回転の邪魔。対策としては腰と膝を折って縮めてしまうのが効果的で、これで下半身側の慣性モーメントは如実に減少する。まずはコレで出来るようになろう。

ただし、敢えて膝を伸ばすことは技をより難しくするが、より美しくもする。別の技と言って良いほど俄然難しくなるが、余力があればぜひチャレンジして戴きたい。この場合、さらに上半身側の慣性モーメントを大きくするため、鉄棒は腰ではなく太腿につける。それで落下する側の質量が増えつつ邪魔する側の質量が減って、一石二鳥。とはいえ、曲がりカドの腰でなく直線状の太腿を回転軸として維持するには、それなりの腕力と体幹が必要だ。精神論の次は筋力、実に体育会系だが物理的に不可避な結論なのだ。

つーかもう、体操ってのは総じて言って、身体の慣性モーメントを制御する競技といって差し支えないのであるよ。それに相応しい姿勢を取るためには、恐怖心に打ち克つこと、体幹を鍛えること、この2つに集約されるのでありました。

 

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蹴上がりの物理

公園の鉄棒でやるにはちょっと高級な技、蹴上がり。小学校でできたらヒーローだ。この技、この動作でなぜ鉄棒に上れるのかは、大抵できる本人もよくわかってない。ちょっと真面目に考察してみた。

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素人鉄棒演舞 蹴上がり

 まず間違っちゃいけないのは、懸垂よろしく腕力で上がっているのではないってこと。肘は始終伸ばしっぱなしで、体を持ち上げるような使い方ではない。
同じく足を振りおろす反動で浮き上がるのでもない。足を上下しても体の重心位置は変わらないからだ。
パッと見ハデな足の上下動で捉えるのが誤解の元で、蹴上がりとはやはり鉄棒を中心とした回転運動なのだ。問題が足なのはあってるが…よく見れば、体が鉄棒下(図の②)にあるときは水平方向、体が鉄棒横まで来たら(図の③)上下方向、と回転する体の進行方向とちょうどテレコになっているでしょう。これが大事!要は足の反動が、上半身の回転運動を加速していて、結果として上半身だけ鉄棒の上まで回転が進む。足を置き去りにして上半身だけ加速させる、とイメージすると分かりやすいだろか。このためには、足の振り下ろしは速ければいいというものではなくて、重心の振り子に即した「適切なリズム」で振るのがキモになる。体感的には早くなりすぎないよう「ぬぅっ」と遅く振るくらいの気持ちがちょうどいい。

また、回転運動中における慣性モーメントの減少、として理解するのもイイ。回転軸に対する質量分布を変形させると、角運動量は保存されるので角速度が変わる、フィギュアスケートでスピンを加速させるアレだ。上半身が先行することで、足振り上げ時の姿勢(図の①)では胸元にあった重心が、足を伸ばすと腰辺りにスライドする。結果として肩が重心から離れ、肩の開き角が小さくなり、肩が閉じたぶん体の重心が鉄棒に近づいて、めでたく鉄棒を回転軸とした慣性モーメントが減少する。待ってましたと角速度が増大して、体が鉄棒の上まで浮き上がるのであった。

(※姿勢の変化自体は、鉄棒を回転軸とした慣性モーメントを増やす方向に働く。畳んでいた体を伸ばすので、体の重心を回転軸とした慣性モーメントは大きくなる。平行軸の定理から考えれば、鉄棒を回転軸とした慣性モーメントも増えてしまう。)

この考察結果を具体的な動作のコツに落とし込んだのが、下のリストだ。

(1) 足の振り上げでは、膝やフトモモではなく足首を鉄棒に近づける。重心を極力回転中心の鉄棒から遠ざけ、大きな角運動量を得るため。
(2) 足の振り下ろし始めは一呼吸おいてから。最下点まで振れ戻って、位置エネルギーがしっかり運動エネルギーに変換されるのを待つ。
(3) 肘は始終伸ばしっぱなし。肘を曲げると、回転軸(鉄棒)から重心(腰)が遠ざかり、慣性モーメントを小さくできない。
(4) 足の動きが効率的に上半身を加速するよう、適切な速さで振る。速ければ良いものではなく、体が上がりきるのと足を振り切るのが同時になるくらいにコントロールする。”上半身の振り子運動から足を置き去りにする”イメージ。
(5) 体が持ち上がってきたら、手首を上に返す。これは物理じゃなくて人体構造に起因するコツだけど、意識してやらないと最後の最後で体が鉄棒に乗っかるのを腕が邪魔してしまう。

さあ皆の衆、蹴上がりをマスターして子供の尊敬を勝ち取るのだ!

 

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逆上がりの物理

先日、公園で逆上がりにチャレンジしている少女を見かけた。一生懸命に足を振り上げているが、残念ながら成功する見込がない。教えてあげたい衝動に駆られるが、知らないおっさんがいきなり声をかけても事案発生かと思われちゃ困るので、そこは留まった。

出来る人は苦もなくできる逆上がり、どうすれば回れるのか、なぜ失敗するのか。ここは物理学の出番だ。といっても数式が必要なほどの話じゃなくて、現象をよく観察する眼があればよい。

逆上がりの過程は、下図のように大きく2つに分けられる。 

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 実演動画


素人鉄棒演舞 逆上がり

 

①図「胸~腹を中心に回る」

いきなり鉄棒を中心にくるっと回りきるイメージは捨てよう。序盤の回転中心はみぞおちにある。①の絵のように、鉄棒-肘ラインの先、みぞおちを中心に体がぶら下がっているイメージで動作開始。シーソーがパタンと反転するように、足を振り上げると同時に頭を後ろに落とす。この感覚で体が反転すれば腰が自然と持ち上がるはずで、②の図のように足が鉄棒に引っ掛かかれば、もう成功は約束されたも同然。
この間、重心を「足を鉄棒に掛けられるところまで」持ち上げる程度の腕力と体幹が必要。でも、「鉄棒の上まで」持ち上げる必要はない。

②図「鉄棒を中心に回る」

足がかかったら体重を鉄棒に預けられるので、あとは簡単。勢いが完全に止まっていても、じたばたすれば頭を上に持ってこれるはずだ。回転軸の移行をスムーズにやれば、①の角運動量を②で流用できるので、滑らかな動作の逆上がりになる。

ネットで逆上がりのコツを検索した時に見つかるのは、

・手を鉄棒の下から持つ
・肘を曲げる
・足を(前でなく)上に振りあげる
・体(腰)を鉄棒に近づける

といったところだけど、要は、重心を中心に体を反転させて、足を引っ掛けるまでの現象を実現させるための、動作の細部を説明しているのだ。現象のイメージさえ掴んでいれば、どれも必然的に達成されるぞ。

 

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「となりのトトロ」 鑑賞メモ

1歳10か月の息子が喜ぶかな?と思ってトトロをレンタルして見せたところ、大ハマリ。返した後もトトロトトロと連呼してせがむもんで、結局Blu-Rayで買う羽目になった。付き合いで死ぬほど繰り返してみたので、語りたい豆知識をみつけてしまったよ。

となりのトトロ [Blu-ray]

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・「メイ」「サツキ」は「May」「皐月」で両方5月のこと。
・家は日本的な平屋に洋風の増築をしている。2階があるのは洋風部分のみ。強引な増築なので階段が見つけにくい。
・引っ越し初日は庭にショウブ(カキツバタ?)やヒメジョオンハルシオン?)が咲いている。5~6月ですね。ワタシは花の知識が薄いですが、描かれる植物のほとんどが具体的な種を特定できそう。ムスメたちの名前からして、5月スタートの話なのだろー。
・七国山病院に行く。病室の壁にかかるカレンダーは6月。行きがけにばーちゃんが田植えをしている。関東周辺としては少し遅いかな?。お母さんが早く退院したくて早めにめくってる可能性も微レ存
・メイが一人で庭で遊んでいる時の、おとうさんの書斎の本、「古代の食事」「古代の農業」「古代の狩猟」「関東地方の~」「森と農耕」。後におとうさん職場を「考古学教室」と呼んでいることからわかる通り、考古学者のようです。書き物をしてるので作家かと思われがちですが。
・メイがトトロ初遭遇後、サツキが帰ってきたときの書斎のカレンダーは5月。さっき6月やったやんかどっちやねん。おとうさんがちゃんとめくっていない可能性の方が高いかなぁ?
・なお、ここで年も描いてある、1955年だ。てことは、サツキは戦時中の生まれなのだ。今生きてたら60歳ちょい。ううむ。
・トトロに会ったというメイに、サツキは「トトロって、絵本に出てたトロルのこと?」と返す。エンディングでお母さんに読んでもらってた絵本が「三匹の山羊」、これに出てくる悪役がトロルなので、これを言ってるようです。メイが「ぐぁぐぁぐぁ~」をトトロと聞き取ったのも、トロルって単語が頭あってのことでしょう。
・雨の日、メイが学校に。黒板は6月23日、梅雨です。当然の如く紫陽花が描かれています。季節感の描写は徹底してる。
・雨のバス停、バス停は「稲荷前」。ちゃんとお稲荷さんがあって、ちょっと怖い雰囲気にメイが怯える。
・トトロ登場、トトロジャンプの直後から雨は止んでいる。傘をパクるなりの配慮はありました。
・サツキ手紙を受け取ったおかあさん、病室のカレンダーは7月。なお、トトロのお土産は「りゅうのひげ」で縛っていたそうですが、これはファンタジーアイテムではなくて植物の名前。グランドカバーに最適。
・手紙の結びは「お母さん様」。「さかなクンさん」みたいなことか。
・夜にトトロと遭遇。夜風に乗るオカリナを聴く(?)お父さんの書斎に置いてる本は「纒向遺跡(まきむくいせき)」「飛鳥」。ちなみに「飛鳥」の著者っぽく書かれてる「金田伊功」はアニメーターの名前。金田動きとか金田パースとかを発明をした伝説のお方で、本作にも参加しておられる。
・電報が来る。背景は入道雲、夏真っ盛り。落ちていたスケッチには、8月21日、「クヌギ」「シラカシ」「コナラ」「マチバシイ」とある。トトロのくれた種から芽が出たやつの観察記録で、サツキの夏休みの自由研究と思われる。
・ばーちゃんの畑で、トウモコロシ、キュウリ、トマト、ナスなどを収穫。当然8月が旬の野菜です。ここでばーさんが野菜で病気が治るとか軽口たたくから、後でメイが無理をする。
・電報でお父さんの名前発覚。「クサカベ タツオ 殿」。
・電話を借りたのはばーちゃんの本家。クサカベ宅を管理してたように、そこそこ土地持ってるし、ちょっとした名家なのかも。
・メイ失踪後、カンタがでかい自転車を妙な乗り方している。昔は子供用自転車なんてなかったし、ママチャリみたいな乗りやすいフレームもなかったので、子供は大人用自転車の三角フレームに足を突っ込んで半周漕ぎを繰り返す、「三角乗り」で推進した。
・この時、サツキとカンタは「カンちゃん」「サツキ」と呼び合う仲である。やったなカンタ。
・ばーさんの拾ったサンダルは、確かに似てるが違う形になってる。妙な都市伝説もありますが、この後もメイは両足サンダル履いてます。
・ネコバスは雄。電線から飛び降りるところで、キンタマが描かれているので。ちなみに足は12本。
・ネコバスが表示する病院の「院」が変なのは、定番の豆知識。
・お別れ時のネコバスの表示は、「す」。巣ですね。これも豆。
・トトロは最後まで傘をがめたまんま。
・おかあさんは無事退院。さつきとめいの服はトトロのアップリケ付き。お母さんが作ってくれたんですねぇ。
・エンディングの季節は秋~冬。たき火で焼き芋したり、干し柿作ってたり、雪だるま作ったり。映画内で春夏秋冬を一周描いてる。宮崎駿アニメはエンディングに情報が多いのでよそ見は禁止!ハッピーエンドの帰結のいい出来事がたくさん垣間見えます。

 

押井映画で似たようなことしてました。

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映画速報 「シン・ゴジラ」

クソ良かった。びっくりした。
既に方々で映画オタクたちが絶賛の評を書いてますが、まさに今年の映画談義の焦点になる映画ですね。未見の人は映画館に急げ。
ゴジラ映画なんて今まで死ぬほど作られてきて、いくら庵野が特撮オタクでやりたいからって、今更語るべき事ってあるの?と思ってたが。さすが庵野だったな。やってくれたな。

以下ネタバレ含む。絶対に予備知識なしで見た方が面白い映画なので、未見で見る気のある人は、ホント気を付けて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゴジラが街を壊すって描写は、歴代の映画が死ぬほどやってきたけど、こんなに真剣に街が壊れることを恐ろしく表現したのは、初代ゴジラ以来じゃあるまいか。初代は空爆の破壊を模していた。今回は津波だ。街が壊れるのは恐ろしい、その恐怖を間近に体験した世代でなければ、これは作れず、感じ取れもしない。今の日本だからこそ構築できたゴジラだ。2年前にアメ公の作ったゴジラ、あれにはこんな真剣味はひとつとしてなかった。

・映像面でも、素直にかっこいい。アメ公ゴジラ、話としてはしょうもない映画だけど、あれ見た時、映像面では結構参ったんだよ。これに引き換え国産ゴジラの安っぽいこと…って。でも違った。国産でもやればここまでできた。それ自体、凄く誇らしい。

・破壊描写は見事だよ。最高だよ。河を遡上すれば津波が起こる。陸を歩けば家が崩れる。それだけで、もうやめてくれってくらいの被害を感じる。でもゴジラって火吹くよなぁ…あーあーあー吹きやがった。それも最悪な吹き方しやがった。壊れすぎ壊れすぎあーあーあーあーあー!!!

・これは役所ががんばる映画。お役所仕事と言えばダメ仕事の代名詞だが、それがそうなるには案外と合理的な理由があって、お役所仕事で日本はいい感じに運営されているのだ。石原さとみの「それは大統領が決めること。あなたの国では誰が決めるの?」はテーマの根幹を突く質問だ。最初、総理はみんなに流されてて自分の意見がないダメリーダーみたいに見えたが、悪いばかりでもない。みんなで決めて、責任は総理が取る。それが日本式だ。最初は決定を促されてビビってた総理だが、徐々に堂々と責任を取れる人になってゆく。首脳陣が全滅した後も進化は止まらない。海外政府は驚く。進化するゴジラは、改善される政府組織との対比でもある。

石原さとみはイーオンに通っといて良かったね!

・無人在来線爆弾、クソ笑った。通常兵器が一通り効かなかった後、大詰めに来てトンデモ兵器炸裂。

・最後のポンプ車、福島原発の冷却作戦を模してるんですってね。あとで知りました。なるほど、そりゃポンプ車で決めにゃいかんわ。

 

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暦の数学、60進法の魔法

1日は24時間。1時間は60分。1分は60秒。暦や時間に使われる単位は10進法じゃないので、区切りが少し変。でも、これで良かったのです。10進法なんかより、24や60の方がずっと便利な数字なのだから。

数の便利さとはつまり、割りやすいこと。言い換えれば、約数が多いと言うこと。特に小さい数(1~6あたりまで)の約数が多いこと。1~60の数の約数をまとめて図にしてみた。

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まずわかることは、10進法はクソだってことだ。哺乳類の指は片手で5本、両手で10本だから、5と10が幅を利かせてるんだが、なにせ5は素数だ。10にはそのまま5と2しか約数がない、3でも4でも割り切れないクソ数字だ。
反対に優秀なのが12。2・3・4・6が約数にあって超便利。哺乳類の好きな5だけが唯一足りてないケド。優秀過ぎて改めてダースって単位が作られたほどだ。
例えば団子をお土産に持っていくとき、12個入りを買えば大抵平等に分配できる。5人でさえなければ。10個入なんてまず喧嘩になるので最悪だ。
とは言え12の約数に5が抜けてるのはやっぱり気になるので、5も約数に加えた1~6を完全制覇する最小の数字が、60だ。日常生活で出会いそうな数字を全部従えている60はミラクル便利だけど、単位としては大きすぎて不都合がなくもない。
ので次点で優秀なのを探すと、30あたりがイイ。4じゃ割れないけど5で割れる。
24もステキ。5はダメでも8で割れる。

さて、そろそろ暦に話を戻そう。
・地球が太陽を1周する1年は365日。およそ360日と丸めれば、360=12×30の便利数字カップリングだ。ちなみにこの間に天球の星座が一周するので、円を360分割する概念が生まれる。

・月が地球を1周するのは29.5日でおよそ30日。先の1年≒12×30日と符合するので実に都合がよくて、月が12回満ち欠けしたらおよそ1年になる。1年を12か月と分けるのはそういうことで、これが太陰暦の起源。

・昔、エジプトでは12進法だった。そして日時計で時間を計っていたので、日の出ている時間を12分割で考えた。後に夜も12分割するようになって、足して1日=24時間。1日の日の出ている時間は季節ごと変わるので、昔は1時間の長さは一定ではなかったのだ。

シュメール人は60進法を採用していた。前述のとおり、60はマジックナンバー。1時間をシュメール人に倣って60分割したのが1分。さらに60分割したのが1秒。
1時間を60分とした便利さは、誰しも経験あるはず。30分、20分、15分、10分、どれも区切りが良い。あんまり使わないだろうけど12分もいい。60のマジック。

・以上まとめると、
 1年=365日≒360日
 月の満ち欠け29.5日≒30日
 1年≒360日=30日×12か月
 1日=24時間=24×60分=24×60×60秒
便利な数ばっかり使われてて見事なもんでしょ。

・ちなみに1週間が7日なのはクソだ。7は素数でクソ不便だし、かの便利な60ですら割り切れない。1週間が6日だったら、色んな計算がシンプルになっていたはずだ。聖書を書いたやつに数学センスが無かったせいだ。

ドレミの物理

 

ドレミと周波数のまとめ。これも正月の理系ギークの会話で出たので。

音は空気の振動であって、周波数で分類できる。周波数が小さければ低い音、高ければ高い音。周波数が簡単な整数比になる音を重ねると、きれいだと感じられる。和音の良し悪しは物理だ。

音階とは周波数1:2(1オクターブ)の音の間を、等比数列で12分割したもの。この12音のうち、良い和音になりやすい音を抽出したのがドレミファソラシの7音だ。とあるドの周波数を1として、各音の周波数比率をまとめたらこうなる。

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周波数の最も単純な比率は1:2、1オクターブってやつ。3和音なら当然1:2:3で、ドドソ。次点で2:3:4のドソド。ドドソの波形をグラフにしたらこんな感じ。

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青いドの周期1回ごとに全部の波数が揃ってますでしょ、おわかり?

オクターブ差を使わない3和音なら3:4:5、これはドミソ・レソシ・ファラドの3つで、登場するのは丁度ドレミファソラシの7音となり、これがベース音の由来。ピアノではこれらが白鍵、使いにくい残りが黒鍵に配置されている。黒鍵配置が中途半端なのは理系センスを逆撫でするが、これならば溜飲を下げよう。グラフにしたらこんな感じ。

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正確には横軸が4まで行けば、3つの位相が0に揃う(平均律で描いたのでチョイずれてる)。完全調和音たるドとソは、横軸2でぴったり合ってますでしょ、おわかり?

ピタゴラス先生に忠実に整数比にこだわるのが純正律純正律は理想だけど、音毎の比率が一定じゃないので転調するとグズグズになる。そこで対策として半音ごとの比率を一定で近似したのが平均律というやつで、周波数が2の1/12乗づつの等比数列になる。

最初の表で分数比にカッコがついてるド#・ファ#・ラ#は、丁度の分数にならない鬼門で、調和しにくい。特に半音6コ差はサイテーな不協和音となり、その比率は平均律でなんと√2、無理数である。こんな和音を使うとピタゴラス先生に海に捨てられる。

なお、こんな勉強をしてもピアノが弾けるようにはならない。