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本と、映画に思うこと。その他、諸々のこと。

読書録21 神道と古代日本の勉強本いろいろ

 古代日本は文字がなかったせいで謎だらけ。断片的な中国の記録くらいしか確実な情報がない中、古事記日本書紀などなど神話の中にもいくばくの現実が反映されているだろうと研究されているものの、そんな曖昧な論拠では推論を事実と断定するのは難しい。まぁ、わからないからこそ想像するのが面白いというものでして、古代に思いを馳せるのはロマンなのだ。
旅行で宇佐神宮に行った余波で気分が盛り上がって、関連図書を一気読みしてみたので記録する。願わくは、一つだけ読んでそれが真相に違いないなどと感化されませんように・・・

 

逆説の日本史〈1〉古代黎明編―封印された「倭」の謎 (小学館文庫)

逆説の日本史〈1〉古代黎明編―封印された「倭」の謎 (小学館文庫)

 

●論点ピックアップ

・邪馬台は中国語ならヤマトと読める。大和朝廷の源流に違いない!

卑弥呼は日巫女。皆既日食で民衆の信用を失って殺され、別の巫女トヨ(台与)にすげ替えられた。天の岩戸神話はこの話。

・国譲りは大和朝廷の征服を、「話し合いで譲ってもらった」ことにした話。オオクニヌシは無残に殺されたので、祟りを恐れて立派な出雲大社に祀られた。出雲大社内のオオクニヌシが拝殿の方を向いてなかったり、拝礼の所作が「二礼四拍手一礼」なのも、崇拝より封印が目的の社だから(四=死の類推)。

宇佐神宮も二礼四拍手一礼。実は二の殿の比売大神というのは卑弥呼(=アマテラス)で、これも殺しちゃったから祟りを恐れて、立派な社に祀っているのだァーッ!応神天皇神功皇后の強力コンビで封印しているに違いない!

 

●感想

・日本古代史関連では初めて読んだ本。断片的な情報をうまくつなげてストーリーを仕上げるのは、推理小説のような面白さがある。ド素人の私に興味を持たせてくれたキッカケではあるが、多少知識のついたあとで読み返すと、素人が好き勝手ブチ上げてるだけなのがわかって恥ずかしい。

・一例として宇佐神宮のくだり、応神天皇が八幡さんと習合されたのは後世の話なので、この論はおかしい。前半で卑弥呼は民衆に殺されたって言ってるのに、この段ではオオクニヌシ同様に征服で殺されたって話になってるし。

 

  ●論点ピックアップ

・アマテラスといえば皇祖神であり神道最高神。でも天皇家が伊勢に参拝するようになったのは明治以降のことだ。古くは宮内に祀られてたのが災いなすので移されて、巡り巡って伊勢に行った。元々は武神でもあり、恐れられ遠ざけられたのだろう。ちなみに本地垂迹説では=大日菩薩さま。

八幡神は元々渡来人の神で、だから総本山は北九州の宇佐にある。後に応神天皇と習合して第二の皇祖神になり、京都石清水に勧進されると怖いアマテラスに代わって天皇家御用達の存在になった。八幡大菩薩なんつって仏教の神様にもなったし、ポピュラー度は最強。

・これらに次いで重視されたのが春日大社で、これは最強の貴族・藤原氏氏神さま。当時の権力構造が反映されている。

 ・国津神最高神オオクニヌシは別名がたくさんあるが、それっていろんな神話の集合体なのかも。また出雲大社の祭祀を担う出雲国造は、かつての豪族でありアマテラス直系の子孫ともされる生き神様でもある。これがオオクニヌシを祀っているのは変であり、謎。国造ご本人が祭祀の対象っぽいが??

 ・菅原道真公は祟りを恐れて祀られたのに、天神(=雷神)と習合して人気が出た。徳川家康公あたりから祟りと無関係に偉人を祀るようになったけど、こういうのは参る人も墓参り程度にしか思ってないので、他の神様とは趣が違う。ガチの神様は畏れを伴うのだ。

 

●感想

 知名度の面で主だった神道の神様&神社を紹介する本で、平安以降の日本人が神様とどう付き合ってきたか、という話がメイン。著者の個人的見解は控えめに、主だった神様の話題をさらってくれてるので、神道に関する入門には丁度よかった。昔の神仏習合ってすごく浸透してたらしくて、これは現代人にはない感覚なので新鮮。逆にいえば政府主導の神仏分離が見事に機能したって意味でもあって、それはまた凄いなって別のところで感心してしまったり。

 

大和朝廷 (講談社学術文庫)

大和朝廷 (講談社学術文庫)

 

 ●論点ピックアップ

・ヤマトの名の勃りとは。ヤマトという地名はたくさんあるが、かつて「ト」の発音には2種類あって、ヤマトのトと合致するのは畿内。九州付近は別のトなので畿内起源説が有力。

 ・三世記は魏志倭人伝邪馬台国の記録がある。その位置も書いてるが、素直に読むと九州通り越して南の海にたどり着く。読み方か書き方かが間違ってるぽくて、いろんな解釈で九州説とか畿内説とかが出たけど、この記録から断定するのは無理。

・四世紀は文字記録がない謎の世紀だが、畿内から古墳文化の発展が見られ、王朝成立の気配。記紀でいえば崇神天皇ヤマトタケルのころ。霊山・三輪山の祭祀権を獲得したこと(=オオタタネコ)によって三輪王権と呼ぶ。昔は祭祀権=政治だった。ちなみに三輪山周辺は山の合間で、語源としてヤマト感がある。崇神朝を北方系の騎馬民族による征服王朝とする説があり、示唆に富むが証拠不十分。

・五世紀、応神~の時代。応神前の系譜には政治的潤色の感が激しくて(神功皇后ヤマトタケル)、諡号の系列にも~イリヒコ→~タラシヒコと隔離があり、系譜の断続が懸念される。中心地も河内に移ってるし、別系統の王朝と思われる。よって以降を河内王朝と区別して呼ぶ。

 

●感想

古代日本史を考察するための主だった知識と論点をさらってくれる入門書。名のある学者さんが平易な文章で書いてくれた良書です。拠り所になる文献の信頼性についても逐次議論してくれて、実に理性的な議論です。あやしげな自説を他人に納得させるための本が多い中、これはありがたい。それでも、この著者さんが個人的に支持する論というのはあって、それを事実と共通認識にすべきでもないので、注意は必要。考古学では客観性を担保するのが難しいのだ。(ちなみに著者さんの立場は、邪馬台国大和朝廷の前身で、その勃りは畿内であり、崇神・応神・継体の三王朝が交代したとする説をとっています)

 

日本の神々 (講談社学術文庫)

日本の神々 (講談社学術文庫)

 

  ●論点ピックアップ

イザナギイザナミは、原初は海の神だった。一方で記紀の神話はイザナギを天空、イザナミを大地の神として、天地の結婚による世界創造を意味しているようでもある。いずれが先行したか不明だが、後世では両者の要素は並存している。

・この二柱は元々淡路島周辺の海洋民の祀るローカルな神だったが、後にアマテラスの親神・世界の創造神にまで格上げされた。伝承の舞台が出雲やら日向やら広くなったのも後付けで、本来はあくまで淡路島周辺だけの伝承だった。

スサノオは、高天原にいるうちは聖地を冒涜する巨魔の役割だが、追放されてからは普通の人間的英雄に豹変する。これは元々別の話をツギハギして、天津神系と国津神系の橋渡しをさせているからでは。出生譚を見ても日・月の兄弟として出てくるのは不自然で、元々はいなかったのに割り込ませた感がある。というか、失敗作のヒルコの話がスサノオとすり替わっていると読むと、書紀の記載は非常にシンプルになる。

スサノオとアマテラスのウケヒで生まれた子は、天皇家の祖先アメノオシホミミの他にもたくさんいるが、どれも出雲やら宗像やら各地の有力豪族の祖先。みんな同じ系譜ってことにしよう、という政治的思惑が明確。

・皇祖神は実は元々タカミムスビだったが、7世紀頃に伊勢あたりで信仰されているアマテラスが割り込んできた。子でなく孫が降臨するのも、2つの降臨神話を無理につないだせいでは。

・天岩戸は冬至に弱った太陽が生まれ変わる儀式・鎮魂祭の説話化。続けて催される大嘗祭は、復活した太陽が降臨する天孫降臨の説話化。

記紀とは、既に存在していた多数の神話を、政治的思惑をもって高度なコントロールのもとに編纂したもの。この時既に、原始的な口伝の神話とは性質が異なるものに変貌している。

 

●感想

プロがプロ向けに書いた本で、私のごとき素人が読み切るには少々ホネだった。統一見解と個人的見解の区別はわかるように書いてくれてるが、参照する文献は国内外に渡りあまりに広範で、真偽を疑いながら読み進めるのは無理。膨大な情報の前にただうなずくのみ。

神話の原像に迫ろうというテーマは実にスリリングで、細部を読み飛ばしてでもその論旨を追う価値がある。もっと知識がついたら、もう一度読み返そうと思う。

 

アマテラスの誕生 (講談社学術文庫)

アマテラスの誕生 (講談社学術文庫)

 

   ●論点ピックアップ

・昔は神社に社はなかった。神様は天にいて、社に常駐するとされてなかったので。神様が地上に天降る手順もきまっていて、それは次の通り。この認識が、当時の文化風習を理解する上でとても重要。
 1.船や岩に乗って山に降りてくる
 2.人が用意していた木(みあれ木)に憑依する
 3.人が川べりまで木を持っていくと、神様が川にもぐる
 4.巫女(棚機つ女)が神様をすくい上げる

・原始的な太陽信仰は各地にあった。天照でアマテルとよばれる男性神もちょいちょいいた。紀伊の太陽神信仰がある時期に官製の女性神アマテラスにすり替えら、各地の信仰もアマテラスに統一されていった。

・時を追うと、巫女はよく神様と混同される。アマテラスが女性なのは、元々天皇家の信仰してた高木神の巫女だったから。よく2人セットで登場するのもそのせい。

・アマテラスが成立したのは壬申の乱の後。天武・持統の治世が胎動の時代で、持統天皇が退位した後が誕生の瞬間。神話の天孫降臨で、子でなく孫が天降るのは、持統天皇が孫(文武天皇)に王位を譲った経緯が反映されている。

 

●感想

自説を力説するタイプの本なので、批判的な視点がないのは注意ですが。古事記成立前の信仰形態って現代とは全然違っていて、そこを推測しつつアマテラス成立の謎を追う過程はなかなかに刺激的だった。アマテラスが作為的に作られたって説がそもそもホォーってカンジ。
特に最終章で描かれる、アマテラスの黒幕:持統天皇の心情なんかは、ちょっと学問じゃないんだけど愛情たっぷりな筆致で、ステキでした。

右翼と左翼

右翼と左翼、区別がわかりにくい。ぐぐればすぐ「革命期フランスの国民議会において、議長席から向かって右側に陣取ってた保守派と、左側に陣取ってた急進派で・・・云々」という語源の説明はでてくるものの、いくら読んでも実際の使われ方にピタっと当てはまらない。使いこなしている人でも大抵は、「コレは右、こっちは左と呼ばれてる」という実例から帰納的にボヤっと把握してるだけではないかと思う。

実例をあげるならこんな感じだ。

・右翼
保守派、穏健派、国粋主義天皇陛下万歳、軍備増強の賛成派、憲法9条改正の賛成派etc.

・左翼
改革派、急進派、平等主義、共産主義、無政府主義、軍キライ、憲法9条改正の反対派、etc.

やっぱりこの言葉だけ比較しても本質は見えんね、対称になってないもの。9条改正は現状変更を試みているわけで保守じゃねーだろとか、天皇陛下万歳の黒い車の人たちは穏健じゃねーだろとか、突っ込みたいポイントだらけ。ちゃんと理解するのに大事なのは、革命期フランスの保守派が何を守ろうとし、急進派は何を変えようとしていたか、ということ。

当時のフランスはすごく貧富が激しくて、その世界の勝ち組が保守派になって既得権益を守ろうとしたし、負け組がまともな生活を勝ち取ろうとした。貧富の差の源は、「身分制度」と「資本主義」の2つだ。そう2つ、ココが大事。この2つはぜんぜん違う事柄なのに、これらの賛成派と反対派をまとめて右と左に分けるから、混乱の元になるのだ。身分制度か資本主義の、いずれかを守ろうとすれば右翼、いずれかに反対すれば左翼だ。

 

まず「身分制度」。

わざと虐げられる人を作る身分制度はまずい、これは現代の共通認識。現代日本では身分制度は廃止されてるけど、まだ天皇陛下がいる。下はなくとも上はある。だから・・・
天皇陛下を敬うのは右翼。
・軍備増強してお国をお守りしよう!という封建社会的発想は右翼。
・9条改正の賛成派は、天皇陛下万歳系の人と一致するので、そのつもりがなくても右翼。反対派は消去法で左翼。
・無政府主義は身分制度を破壊するための極端な例として左翼。(ノーガードの資本主義に至るので、左翼の思想に沿うとは思えないが・・・

 

次に「資本主義」

昔の資本主義は労働者になんの保証もないノーガードの野蛮な世界で、貧しい労働者は餓死寸前な一方、勝ち組は連日舞踏会。現代の日本は生活保障とか最低賃金とかいろんな制度で最低限の生活が確保されてるし、既に左翼の主張が相当に通った後の世界なんだよね。ともあれ・・・
共産主義は、資本主義を破壊しようとする試みなので左翼。
・労働者の権利を拡大しようとするのは左翼。共産主義でなくとも労働組合は左翼。
・また、社会保障さえあれば資本主義自体は右翼とは呼ばれにくい。

 

あまり合理的な区分じゃないので、右か左かで自分や他人を規定して罵り合うのは意味ないよなー、というのが今日の結論です。

クロスバイクのカスタム紹介2

 

だいぶ前にもクロスバイクのカスタムの記事を書いたけど、その後の推移を追記するっす。

tiltowait9.hatenablog.com

 

前回の記事を描いた当時はこれでもやってた方だったんだけど。今クロスバイクのカスタムで検索すると、凝った記事がたくさん出てきおる。時代の流れを感じるにゃあ。

 

①ハンドル周りを変更f:id:tiltowait9:20170723150928j:plain
グリップ一体型のエンドバーを使ってたけど、より良いポジションを求めて変更。長めのバーを買ってきて、ハンドルバーの中程に設置。オマケのバーをハンドルバーの端に付ければバーエンドバー、今回のように中に付ければバーセンターバーと呼ぶ。横向きにグリップする部分は、つけたバーが邪魔して普通のグリップが取り付けられないので、バーテープで処理した。バーババー
使ったのはこちら ↓↓↓

シマノ  バーテープ Sシリコン ブラック PRTA0001

シマノ バーテープ Sシリコン ブラック PRTA0001

 

この変更で、姿勢の前傾度合いが俄然UP。体重をペダルにダイレクトに乗せる感覚が生まれ、ようやく、スポーツバイクで本来取るべきフォームが取れた気がする。前傾を深めるためにバーセンターバーは長いほうが良くて、この150mmの長めバーがいい感じ。ドロップハンドルの妥当性も実感できるところだケド、クロスのドロハン化は断固拒否。

なおこの構成ではバーセンターバーがブレーキとギアチェンジの邪魔になる。はっきり言って不便。TREK FX7.3は、ブレーキとギアチェンジレバーが一体型であることもあり、配置に自由度がないのが原因。ここも換えてしまうか・・・??

あと、横に持つ長さが短いのでちょい持ちにくい。こうなると、以前ハンドルバーを切り詰めたのが悔やまれる。むぅ。

 

②サドル

長く乗ってると傷んできたので仕方なく。尻のかたちが人それぞれなので、サドルばかりはどれがいいとは一概には言えないらしい。とりあえずデザインと最低限のクッション性と軽さとのバランスを見て選んでみた。

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 採用したのはこちら ↓↓↓

SELLA ITALIA(セライタリア) Q-bik BLACK V09A001AE0007

SELLA ITALIA(セライタリア) Q-bik BLACK V09A001AE0007

 

 重さを実測比較するとこれこのとおり。

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314g→271g。思ってたより、元々のが、軽いな。

バーセンターバーでほとんどサドルに体重の乗らないフォームを獲得した今の俺にとって、乗り心地はどれでも変わらんかもしれん。重さの違いは誤差だな、乗り心地としてはようわからん。

 

③タイヤ

前回の投稿で32C→28Cにしてたけど、結局25Cまで細くした。PanaracerのRACE D Evo2。メーカーのラインナップ上の扱いとして、28Cまでは「普段使い用の細め」だったのに対して25Cは「レース用の太め」なので、ネットで探すときの検索ワードが変わるのが注意点。

28C→25Cでギア1枚弱くらい軽くなる印象。スリップの懸念も対して感じないし、イイ感じ…と、一時は満足してたんだけど、後日28Cに戻した。片道9.5kmの通勤に使い始めたところパンクが多発したのが理由だ。段差を超えるテクニックで改善の余地はあったものの、会社に遅刻するリスクは抱えられないと判断。重くはなるけど、やっぱパンクへの安心感という面では圧倒的に28Cで、かなり大きな違いを感じた。戻した先はこちら。 

 通勤にはツーキニスト、それ用に販売してるなりの意味があるナ。タイヤ幅の最適解はやっぱり、用途や距離による。少なくとも32Cまで戻すことはないと思うケド。

 

④小物

自転車の長距離運転はなにせパンクが怖いので、パンク対策グッズは常時携帯するべきだ。ボトルホルダーにフィットする小物入れが売られていて、これが実に便利。ワタシが買ったのはこちら↓↓↓ 

 ここに換えのチューブ、携帯用空気入れ、タイヤレバーを詰めておくのだ。準備がないときに限ってパンクするのが世の常だものね、常時持っとくしかないのだ。重くなるという人は、その分ハラの脂肪を減らせ。

前方&後方支持回転の物理


素人鉄棒演舞 前と後ろの支持回転

後方支持回転・・・俗称、空中逆上がり。
前方支持回転・・・俗称、空中前回り。

どちらも上半身を落下させた勢いでくるっと鉄棒を一周する技だ。でも手の摩擦などなどでエネルギーをロスるので、漫然と保存則に従っていては元通りには戻れない。エネルギー保存則を打破するポイントは、この運動が落下である一方で回転であるということ。つまり、姿勢制御による慣性モーメントのコントロールである。

①前半=上半身が落下
 慣性モーメントを大きくして、大きな角運動量を獲得
 →背筋を伸ばし、アゴを引いて首を伸ばす。
②後半=上半身が上昇
 慣性モーメントを小さくして、角速度を上げる
 →猫背になり、首をうつむけて縮める

これだけ。簡単でしょ?…と言うは易しだが。なにぶん前半は落ちてるわけで、落ちてる時は首をすくめて縮こまるのが抑えがたい本能というもの、そこで背筋を伸ばせとは酷だ。つまり回転技習得の真髄は、恐怖心の克服という精神論がその大勢を締めるのである。

ここまでの話は、鉄棒の周囲を回転する技では共通なこと。例えば、足掛け前転&足掛け後転、天国回り&地獄回り。私はできませんが・・・大車輪でも同じなはず。

また、鉄棒の反対側に出ている下半身は逆に動くので回転の邪魔。対策としては腰と膝を折って縮めてしまうのが効果的で、これで下半身側の慣性モーメントは如実に減少する。まずはコレで出来るようになろう。

ただし、敢えて膝を伸ばすことは技をより難しくするが、より美しくもする。別の技と言って良いほど俄然難しくなるが、余力があればぜひチャレンジして戴きたい。この場合、さらに上半身側の慣性モーメントを大きくするため、鉄棒は腰ではなく太腿につける。それで落下する側の質量が増えつつ邪魔する側の質量が減って、一石二鳥。とはいえ、曲がり角の腰でなく直線状の太腿を回転軸として維持するには、それなりの腕力と体幹が必要だ。精神論の次は筋力、実に体育会系だが物理的に不可避な結論なのだ。

つーかもう、体操ってのは総じて言って、身体の慣性モーメントを制御する競技といって差し支えないのであるよ。それに相応しい姿勢を取るためには、恐怖心に打ち克つこと、体幹を鍛えること、この2つに集約されるのでありました。

蹴上がりの物理

公園の鉄棒でやるにはちょっと高級な技、蹴上がり。小学校でできたらヒーローだ。この技、この動作でなぜ鉄棒に上れるのかは、大抵できる本人もよくわかってない。ちょっと真面目に考察してみた。

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素人鉄棒演舞 蹴上がり

 まず間違っちゃいけないのは、懸垂よろしく腕力で上がっているのではないってこと。肘は始終伸ばしっぱなしで、体を持ち上げるような使い方ではない。
同じく足を振りおろす反動で浮き上がるのでもない。足を上下しても体の重心位置は変わらないからだ。
答えは、振り子運動中における慣性モーメントの減少、コレだ。回転軸に対する質量分布を変形させると、角運動量は保存されるので角速度が変わる。フィギュアスケートでスピンを加速させるアレだ。

でもどうして、この動作で慣性モーメントが小さくなるんだろう?足を振る動作が大事なのはそうだけど、単に振り下ろした反動で体が浮いて…と考えちゃうと間違い。さっきも書いた通り重心位置は変わらないからだ。姿勢の変化自体は、鉄棒を回転軸とした慣性モーメントを増やす方向に働くし。
(畳んでいた体を伸ばすので、体の重心を回転軸とした慣性モーメントは大きくなる。平行軸の定理から考えれば、鉄棒を回転軸とした慣性モーメントも増えてしまう。)

あの足の動きを単に上下していると見るのが誤解の元で、あれ実は上半身を鉄棒周りの回転方向へ加速しているのだ。鉄棒下(図の②)では水平方向、鉄棒横まで来たら(図の③)上下方向と、振り子運動する体の進行方向とちょうどテレコに足が動いて、その反動が上半身を推進させ続ける。重心位置(図中の×印)はこの動作に影響されず元々の振り子運動を続けていてるので、上半身が先行することで、足振り上げ時(図の①)胸元にあった重心が腰辺りにスライドする。結果として肩が重心から離れ、肩の開き角が小さくなり、肩が閉じたぶん体の重心が鉄棒に近づいて、めでたく鉄棒を回転軸とした慣性モーメントが減少する。待ってましたと角速度が増大して、体が鉄棒の上まで浮き上がるのであった。

この考察結果を具体的な動作のコツに落とし込んだのが、下のリストだ。

(1) 足の振り上げでは、膝やフトモモではなく足首を鉄棒に近づける。重心を極力回転中心の鉄棒から遠ざけ、大きな角運動量を得るため。
(2) 足の振り下ろし始めは一呼吸おいてから。最下点まで振れ戻って、位置エネルギーがしっかり運動エネルギーに変換されるのを待つ。
(3) 肘は始終伸ばしっぱなし。肘を曲げると、回転軸(鉄棒)から重心(腰)が遠ざかり、慣性モーメントを小さくできない。
(4) 足の動きが効率的に上半身を加速するよう、適切な速さで振る。速ければ良いものではなく、体が上がりきるのと足を振り切るのが同時になるくらいにコントロールする。”体の振り子運動から足を置き去りにする”とイメージするとよい。
(5) 体が持ち上がってきたら、手首を上に返す。これは物理じゃなくて人体構造に起因するコツだけど、意識してやらないと最後の最後で体が鉄棒に乗っかるのを腕が邪魔してしまう。

さあ皆の衆、蹴上がりをマスターして子供の尊敬を勝ち取るのだ!

逆上がりの物理

先日、公園で逆上がりにチャレンジしている少女を見かけた。一生懸命に足を振り上げているが、残念ながら成功する見込がない。教えてあげたい衝動に駆られるが、知らないおっさんがいきなり声をかけても事案発生かと思われちゃ困るので、そこは留まった。

出来る人は苦もなくできる逆上がり、どうすれば回れるのか、なぜ失敗するのか。ここは物理学の出番だ。といっても数式が必要なほどの話じゃなくて、現象をよく観察する眼があればよい。

逆上がりの過程は、下図のように大きく2つに分けられる。 

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 実演動画


素人鉄棒演舞 逆上がり

 

①図「胸~腹を中心に回る」

いきなり鉄棒を中心に回るイメージは捨てよう。序盤の回転中心はみぞおちにある。①の絵のように、鉄棒-肘ラインの先、みぞおちを中心に体がぶら下がっているイメージで動作開始。シーソーがパタンと反転するように、足を振り上げると同時に頭を後ろに落とす。この感覚で体が反転すれば腰が自然と持ち上がるはずで、②の図のように足が鉄棒に引っ掛かかれば、もう成功は約束されたも同然。
この間、重心を「足を鉄棒に掛けられるところまで」持ち上げる程度の腕力と体幹が必要。でも、「鉄棒の上まで」持ち上げる必要はない。

②図「鉄棒を中心に回る」

足がかかったら体重を鉄棒に預けられるので、あとは簡単。勢いが完全に止まっていても、じたばたすれば頭を上に持ってこれるはずだ。回転軸の移行をスムーズにやれば、①の角運動量を②で流用できるので、滑らかな動作の逆上がりになる。

ネットで逆上がりのコツを検索した時に見つかるのは、

・手を鉄棒の下から持つ
・肘を曲げる
・足を(前でなく)上に振りあげる
・体(腰)を鉄棒に近づける

といったところだけど、要は、重心を中心に体を反転させて、足を引っ掛けるまでの現象を実現させるための、動作の細部を説明しているのだ。現象のイメージさえ掴んでいれば、どれも必然的に達成されるぞ。

「となりのトトロ」 鑑賞メモ

1歳10か月の息子が喜ぶかな?と思ってトトロをレンタルして見せたところ、大ハマリ。返した後もトトロトトロと連呼してせがむもんで、結局Blu-Rayで買う羽目になった。付き合いで死ぬほど繰り返してみたので、語りたい豆知識をみつけてしまったよ。

となりのトトロ [Blu-ray]

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・「メイ」「サツキ」は「May」「皐月」で両方5月のこと。
・家は日本的な平屋に洋風の増築をしている。2階があるのは洋風部分のみ。強引な増築なので階段が見つけにくい。
・引っ越し初日は庭にショウブ(カキツバタ?)やヒメジョオンハルシオン?)が咲いている。5~6月ですね。ワタシは花の知識が薄いですが、描かれる植物のほとんどが具体的な種を特定できそう。
・七国山病院に行く。病室の壁にかかるカレンダーは6月。行きがけにばーちゃんが田植えをしている。関東周辺としては少し遅いかな?。
・メイが一人で庭で遊んでいる時の、おとうさんの書斎の本、「古代の食事」「古代の農業」「古代の狩猟」「関東地方の~」「森と農耕」。後におとうさん職場を「考古学教室」と呼んでいることからわかる通り、考古学者のようです。書き物をしてるので作家かと思われがちですが。
・メイがトトロ初遭遇後、サツキが帰ってきたときの書斎のカレンダーは5月。さっき6月やったやんかどっちやねん。たぶん6月が正解、おとうさんはちゃんとめくっていないのだ。
・なお、ここで年も描いてある、1955年だ。てことは、サツキは戦時中の生まれなのだ。今生きてたら70歳ちょい。ううむ。
・トトロに会ったというメイに、サツキは「トトロって、絵本に出てたトロルのこと?」と返す。エンディングでお母さんに読んでもらってた絵本が「三匹の山羊」、これに出てくる悪役がトロルなので、これを言ってるようです。メイが「ぐぁぐぁぐぁ~」をトトロと聞き取ったのも、トロルって単語が頭あってのことでしょう。
・雨の日、メイが学校に。黒板は6月23日、梅雨です。当然の如く紫陽花が描かれています。
・雨のバス停、バス停は「稲荷前」。ちゃんとお稲荷さんがあって、ちょっと怖い雰囲気にメイが怯える。
・トトロ登場、トトロジャンプの直後から雨は止んでいる。傘をパクるなりの配慮はありました。
・サツキ手紙を受け取ったおかあさん、病室のカレンダーは7月。なお、トトロのお土産は「りゅうのひげ」で縛っていたそうですが、これはファンタジーアイテムではなくて植物の名前。グランドカバーに最適。
・手紙の結びは「お母さん様」。「さかなクンさん」みたいなことか。
・夜にトトロと遭遇。夜風に乗るオカリナを聴く(?)お父さんの書斎に置いてる本は「纒向遺跡(まきむくいせき)」「飛鳥」。ちなみに「飛鳥」の著者っぽく書かれてる「金田伊功」はアニメーターの名前。金田動きとか金田パースとか、色んな発明をした伝説のお方。
・電報が来る。背景は入道雲、夏真っ盛り。落ちていたスケッチには、8月21日、「クヌギ」「シラカシ」「コナラ」「マチバシイ」とある。トトロのくれた種から芽が出たやつの観察記録で、サツキの夏休みの自由研究と思われる。
・ばーちゃんの畑で、トウモコロシ、キュウリ、トマト、ナスなどを収穫。当然8月が旬の野菜です。ここでばーさんが野菜で病気が治るとか軽口たたくから、後でメイが無理をする。
・電報でお父さんの名前発覚。「クサカベ タツオ 殿」。
・電話を借りたのはばーちゃんの本家。クサカベ宅を管理してたように、そこそこ土地持ってるし、ちょっとした名家なのかも。
・メイ失踪後、カンタがでかい自転車を妙な乗り方している。昔は子供用自転車なんてなかったし、ママチャリみたいな乗りやすいフレームもなかったので、子供は大人用自転車の三角フレームに足を突っ込んで半周漕ぎを繰り返す、「三角乗り」で推進した。
・この時、サツキとカンタは「カンちゃん」「サツキ」と呼び合う仲である。やったなカンタ。
・ばーさんの拾ったサンダルは、確かに似てるが違う形になってる。妙な都市伝説もありますが、この後もメイは両足サンダル履いてます。
・トトロ、ネコバス召喚。ネコバスは電車より早い。
・ネコバスは雄。電線から飛び降りるところで、キンタマが描かれているので。ちなみに足は12本。
・ネコバスが表示する病院の「院」が変なのは、定番の豆知識。
・お別れ時のネコバスの表示は、「す」。これも豆。
・トトロは最後まで傘をがめたまんま。
・おかあさんは無事退院。さつきとめいの服はトトロのアップリケ付き。お母さんが作ってくれたんですねぇ。
・エンディングの季節は秋~冬。たき火で焼き芋したり、干し柿作ってたり、雪だるま作ったり。映画内で春夏秋冬を一周描いてる。